「求める理想は実現する」その87
経営の限界にどう対処するか
Press release
  2008.03.08/観光経済新聞

 鉄則4は、経営を継続させるか放棄するかの決断だ。その時に大きなファクターの1つとなるのがGOPだ。
 GOPを確保できていないということは、原価や人件費など個々のコストダウンを行ってきたが、それだけでは限界があるという現実を物語っている。言い換えれば、それまでやってきた経営改善とは、マネジメントの仕組みを変えずに、目に付く経営数字を小手先で操作しているのに過ぎなかったといえる。当社の「経営名人―接客編」で提案しているように、仕組みの大胆な再編が欠かせない。この点をさらに企業規模でリストラクチュアリングするのが構造改革といえる。
 さて、現実問題として価格単価の引き下げが進んでおり、すでに指摘してきた「高→中、中→低、低→?」の構図が顕著になっている。そして、最後に行き着く「?」とは、筆者として最も書きたくないフレーズ(放棄)だ。なぜなら、たとえわずかでも可能性があり、持続の意志があるのならば、乾坤一擲(けんこんいってき)の構造改革にチャレンジすべきだからだ。
 構造改革では、まさに全館の整合性ある運営システムを目指すわけだが、その第一歩としてコスト面で大きなウエートを占める人件費の適正化が求められる。端的にいえば、価格を下げたのならば、人件費はそれ以上に下げなければ、全体としての整合が図れない。これを模式化したのが下の図だ。
 最上段を現状の売上に対する配分率と想定し、これを単価(売価)引き下げに比例して縮小すると中段の図になる。原価や諸経費は、相応に縮小されるが、借入返済に回す分やGOPまで比例して縮小したのでは、単価を引き下げた意味がない。そこで、借入返済やGOP分は、少なくとも現状をキープするとなれば、下段のように人件費を見直す以外にない。
 当社の「経営名人−接客編。(旧・配膳システム)の基本的な理念は「CSvsESvsコスト」にある。例えば、接客が10人、フロントが5人、ラウンジに2人、売店に3人で合計20人だったとする。この体制でそれぞれの部署で働く場合、時間帯によって担当者が足りなかったり余ったりする。足りない場合は、忙しいという状況下でのサービス低下や労働強化、あるいは売上増進のチャンスを逸するなどのマイナス要素が働く。
 そこで、経営管理ツールである経営名人−接客編は、部署毎に硬直していた従来のタテ割り管理を排して、客導線にあわせた勤務体系に組み替えている。端的にいえば、売店担当が客の来る可能性のない時間帯も売店の売り場に張り付いているのではなく繁忙時間帯の部署やバック部門でのヘルプに回る。結果として出迎えに集中することが可能となり、大切なファーストインプレッションで好感度(CSアップ)を与えることができるし、労働強化にもならない(ES向上)。この構図は、要因を適切にシフト管理しなければ逆効果にもなり、それを可能にさせる経営管理ツールが不可欠ということになる。しかも、CSやESを向上させても各部署での要因増強は必要なく、逆に業務の効率化によってコスト管理面でも効果を発揮するわけだ。余剰人員を他部門の充実に回すか、あるいは人件費削除へ向けるかは旅館の置かれている状況を勘案していかようにも対応できる。
 こうした管理体制がなぜ可能かは、本コラムで再三解説してきたところであって重複は避けるが、要はこれまで1人が一連の流れの中で行う一つの仕事と考えられていたものも、実は複数の作業に分割でき、それらをここにリリースした上でラインを再構築することで大幅な合理化が可能ということだ。

(つづく)

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