「求める理想は実現する」その84
価格連動のオペレーションを
Press release
  2008.02.16/観光経済新聞

 鉄則3は、自館の棲み分けをすること。
これは、自館の経営が成り立つように価格セグメントをしながら、集客アップへのアピールといえる いわばGOPを確実に確保できる経営状況をつくりあげることであり、仮に6,000〜7,000円でも薄利多売で稼働率を高めることで、GOP確保の道がある。
各温泉地の現状をみると、価格の高い旅館が集客力の強化を狙って価格を落としてくる。そうなると、従来その価格帯だった旅館は、それよりも低い価格に引き下げなくてはならなくない。そこで、自館のグレードを見直す必要が出てくるわけだ。
だが、単に価格を低い方にスライドさせれば済むという問題ではない。例えば、15,000〜10,000円を中心に25,000〜8,000円の価格帯で営業している旅館を模式化してみよう(下図=数値は理論値)。価格帯を3つに大別して平均値でGOP(黒い部分)を想定してみると、最善でも10%程度にしかならない(図左側)。したがって、各価格帯をそのまま引き下げれば、経営はさらに悪化する。
ところが、オペレーションを再構築して料理原価や接遇サービスなどの内容を変更することで、GOPは一気に改善される(図右側)。
ただし、オペレーションの変更によって、従来はわずかだが存在していた20,000円前後の価格帯との棲み分けをしなければならない。25,000円と8,000円では、オペレーションは当然ながら異なる。それらを混在させるとオペレーションが複雑になるだけでなく、高額客で得た利益を低額客に補填する「貢ぎの構造」になってしまうからだ。

こうした荒療治にも近いオペレーションの変更は、言葉を換えれば旅館のグレーにもかかわってくる。その選択は、辛く厳しいものであるのは間違いない。そこで多くの場合、従前の価格セグメントに固執したオペレーションから抜け出せないまま、単価だけを下げてしまう。そうした場合、高品質を掲げてきた旅館では厳しい結果を招いてしまう。例えば、価格に見合った部屋食をセールスポイントにしてきた旅館は、従前のスタイルを維持するために料理原価を下げ、料理出しの回数を減らすなどでGOPをかろうじて確保できるとソロバンを弾く。しかし、評判はおのずと下がってくる。結果として価格と品質の低下スパイラルに落ち込んでしまう。価格を下げることは、そうした諸刃の剣でもある。
 余談だが、徹底した低価格路線を貫く旅館をみると、食事などは給食センターにアウトソーシングしている。日々に必要な量は、決して一定でない。社内で調理をすれば、宿泊客が少ない日でも人件費は一定のものがかかっている。また、食の安全が叫ばれて食への関心が高まっている今日では、大量仕入で単価を下げても、消費期限などの関係で原材料のロスが生じるケースもあり得る。そうした場合、必要な量だけをアウトソーシングでまかなうオペレーションは、低価格をターゲットにした経営で理に叶っており、低価格であっても確実にGOPを確保できる証左といえる。
要は、GOPを常に意識して料理・サービスなどコストの一つひとつを見極ることだ。その場合、従来の経験則や勘では成り立たない。提供するサービスグレードを基に妥当性の根拠となる価格設定の「標準ガイドライン」、あるいは設定した価格が適正なGOPを確保しているかを解析する「旅館ユニフォームシステム」(当社「GOP名人」など)といった経営ツールが欠かせない。

(つづく)

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