「求める理想は実現する」 その75
標準ガイドラインの概略(上)

Press release
  2007.11.17/観光経済新聞

 料金設定の「標準ガイドライン」は、旅館を@全館A客室B食事C大浴場の4カテゴリーに大分類し、それぞれに詳細なチェック項目を設定している。細目を紹介するのは時期尚早の感もあるために、概略のみを記してみたい。
 @−1全館ハード
 日常を離れた旅館滞在では、相応の華やぎが求められる。単に華美という意味ではなく、しっとりと落ち着いた雰囲気もそれに該当する。そこで外観を含めた「見た目」もハード面での重要な要素となる。それらを客観的に把握するためには、新築や改装からの経年といった数値やメンテナンス状態のほか、総床面積や収容人数から割出した1当りの占有面積が「ゆとりの空間」として判断の一角を担う。
 パブリックスペースについては、ロビーやラウンジ、 売店、クラブやバー、夜間の食事処、娯楽施設などの空間提供の有無、広さ、機能性、装飾、照明や採光状態、あるいはそこからの景観なども判断対象となる。さらにバリアフリーをはじめとした障害者へのハード面での配慮も不可欠要素だ。平成6年に制定されたハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)やシルバースター制度などが該当する。
 @−2全館ソフト
 施設の顔ともいえるフロントは、係の常駐状態(規模によっては24時間体制も)をはじめ、従来から行われている各種サービス、コンシェルジュサービス、館内や周辺観光案内ほか多岐にわたる。
 エントランスでは玄関接客としての送迎体制など係の常駐があり、こうした要員体制はラウンジや駐車場にも求められる。また、駐車場では場内案内や誘導、車回しなどの有無や質が問われる。
 このほか常識である消防適合マークの取得と掲出、最近ではAED(自動体外式除細動器)の配備もあげられる。車椅子の用意もサービスの一環として位置づけられる。さらに全館レベルでのセキュリティー体制の整備、あるいはマニュアルの整備、防災訓練の実施など利用客が直接目にすることのない部分の備えも重要だ。
 A−1客室ハード
 客室全体としてのハード面では、快適・清潔・安全の3要素はいうまでもない。全館ハードと同様に経年やメンテナンス状態(傷や汚れ)、「ゆとり空間」としての面積など。さらに、床の間、広縁、次の間、バス・トイレ、踏み込みなどの間取り的なものだけでなく、眺望がもてなしの1要素と捉えれば、景観を取り入れた空間設計も重要な判断ポイントとなる。
 また、客室個別の基本的な事項としては防音対策、遮光対策、出入り口の施錠、冷暖房設備と客室での温度調整、テレビ視聴(衛星放送を含む)、冷蔵庫、室内金庫と目隠しの状態、電話客室湯沸かし器、時計、クローゼット、空気清浄設備、行灯や足元照明などの夜間用照明といった諸設備の有無、照明器具、家具・什器備品などの質と機能性もあげられる。
 付帯部分として洗面所、バス・トイレにも快適・清潔・安全の3要素が求められる。とりわけウォシュレット型のトイレは、家庭でも一般化していることから欠かせない。大浴場が温泉地の旅館では目玉施設の一つだが、それでも客室のバスタブは大きさや深さもチェックポイントにあげられる。
 A−2客室ソフト
 基本的な部分では、緊急時(避難)説明、貴重品取り扱い説明、館内と部屋設備の案内をはじめ浴衣や丹前、館内履、タオル、アメニティ、お茶セット、テレビ番組表など用意であり、これらについては改めて述べるまでもない。
 また、部屋への案内や呈茶・ウェルカムドリンク、浴衣合わせ、複数枚の浴衣やタオル、バスタオル、子供用浴衣やスリッパ、ドライヤーの用意、新聞提供、モーニングコールなどのほか、チェックイン・チェックアウト時間、布団の上げ下げ時間の可変運用もソフト面の評価に加えることができる。

(つづく)

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