求める理想は実現する その39
成功する経営者、9つの資質
Press release
  2007.02.10/観光経済新聞

いま、筆者のデスク上には、何冊ものファイルが積み重ねられている。大半の資料はパソコンに集積しており、ファイルを改めて見る機会は少ない。ただ、ディスプレイに投影された文字と紙に印刷された文字では、イメージの広がりに何がしかの違いを感じている。それは、テレビのニュースで知っていても、新聞で改めて確認したい心情に似た感覚といってもいい

妙な書き出しになってしまったがそれには訳がある。筆者は、旅館版レベニューマネジメントをはじめ、さまざまな近代経営ツールを紹介してきた。だが、ツールはどこまでも人間を補完する道具であり、それを使う経営者の資質によって結果が大きく違ってくる。いわば、本シリーズのタイトルである「求める理想は実現する」のとおりであり、経営者が自ら理想を描き、それを追い求めて実現させようとする姿勢が不可欠だ。逆に、それがないと近代経営ツールに魂が入らない。
道具に魂などおかしな話だが、例えば移動手段としては、歩くよりクルマの方が圧倒的に早い。ところが、昨今の飲酒事故などをみていると、移動の機能だけだが利用されて、便利な道具は諸刃の剣であることが忘れられている。また、どんな高級車であっても、オーナーが大衆車の感覚で接していれば、高級車のポテンシャルは発揮できない。その一つが、スピード。高級車のポテンシャルは、公道の制限より何倍もの速度を秘めている。そのスピードだけに目を向けるのが、大衆車感覚のオーナーといえる。高級車感覚のオーナーは、それを余裕とみる。危険回避のために、必要なときにだけスピードを生かす。軽くアクセルを踏むだけで、それを実行できるのが余裕。余裕が安全運転につながり、平時は快適な居住性や操作性を堪能している。飲酒運転や無謀な高速運転などは、高級車に魂を入れて接するとできなくなる。私事だが、クルマ好きの一人としては、道具を越えた愛着をもってクルマに接している。それが、魂を入れることだと思う。

前置きが長くなってしまったが、旅館版レベニューマネジメントをはじめとする近代経営ツールは、それ自体のポテンシャルから相応の成果は得られるが、それは筆者の理想とするところではない。やはり、可能性を最大限に引き出し、より大きな成果物を手中にしてほしいと願っている。そこで、導入に向けたケーススタディとして、これまでに筆者が接してきた経営者像を振り返ってみることにした。冒頭のファイルは、そのために資料だった。
さて、ケーススタディの前に、これまでの事例から「成功した経営者」に共通する9カ条の資質を列挙してみよう。もちろん、全てを満たしている人もいれば、幾つかは不備といったケースもあるが、不足部分を他の資質が補完し、結果として成功している。つまり、バランス感覚が大切だということであり、そうした視座から以下の点を捉えてほしい。

第1は、GOPを必ず確保していることであり、仮に下がったときは必要な「決断」が下せる。
第2は、組織長に任せていること。
第3は、計画性があること。
第4は、目標設定が明確で、下方修正はしない。
第5は、着眼点・行動力・思考力・洞察力のバランスがよく、とりわけ着眼点と行動力が共通して いる。
第6は、第三者の話を素直に聞く姿勢がある。仮に自分の頭の中で結論が出ていても聞く姿勢を、誰に対してももっている。
第7は、よい社会人であること。
第8は、計算高いこと。ただし、それを露骨に感じさせない。
第9は、駆け引きをしていい相手(業者など)と、してはいけない相手(社員など)を区分して接する力がある。

以上の9項目は、どれも経営者として保持する資質であることに、大半の読者は異論ないだろう。しかし、現実の経営場面では、異なる方向で展開しているケースが多々ある。厳しい状況を勘案すればある意味で否めないし、耳の痛い話かもしれないが、こころしてほしい。

(つづく)

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