「求める理想は実現する」 その36
ギャップ分析踏まえ再構築

Press release
  2007.01.13/観光経済新聞

 今回は、旅館版レベニューマネジメントで重視する項目の1つである「ギャップ分析」について考えてみよう。
いま、大多数の旅館で「人数あってカネ足らず」に陥っている。なぜそうした結果になるのか――例えば1万2000円で1万人の集客を机上で計算し、そこに原価を整合させる形で計画を練る。机上の空論とはいわないが、そうした演繹的な発想では、前提に不備があれば答えはおのずと知れたものだ。つまり、施設・料理・サービスのグレードや原価など因果関係を積み重ねた結果の帰納的な1万2000円ではない。このため1万2000円を設定しても、1万円あるいは9000円以下での販売になってしまう。これでは販売計画も経営計画も成り立たない。
もちろん、そうした価格で売らなければ当面の経営が成り立たない厳しい現実があることも承知しているし、単価を下げても販売実績がついてくれば当座の経営は回るといった経営者の言もわかる。また、マーケットプライスに合わせるのも、やむを得ない仕儀かもしれない。ただ、それを続けていてはアリ地獄的な状況から抜け出すことはできない。これも事実だ。

そこで、ギャップ分析が求められる。どこの部分で採算が合わず利益が確保されていなかを明らかにするためだ。結果として室料を確保できない現実が指摘できる。パブリックや料理、サービスなどの原価は割出せるし、実績もその数字が当てはまる。ところが室料は、マイナスの場合もある。一例をあげると、平均客単価が1万2000円程度で売価が7000円だと、室料は「0円」になってしまう。パブリック・料理・サービスの原価と室料に含まれる固定人件費などを合算すると7000円かそれ以上になってしまうからだ。
多少乱暴な喩えだが、宿泊需要の比率を車のユーザー数になぞらえると、ざっくり捉えて高級車セルシオクラスが全体の2%、クラウンクラスが10%、最も多いのは当然ながら大衆車クラスで、これに軽自動が加わる。そうした状況を旅館の価格に当てはめるとセルシオが5万円以上クラウンを4万円台とすれば、最も多い大衆車は1万〜1万5000円、そして1万円以下の軽自動車といったところ。
つまり、大衆車の上クラスである部屋食1万5000円にこだわるあまり、マーケットプライスに照らして販売しやすい1万2000円を度外視した商品企画がまかり通っている。だが、現実は1万5000円で売り切ることができず、そうした部屋をいきなり9000円に落として売る手法に出る。これでは不動産業の基幹である室料を確保できない。
 ギャップ分析を行うと、こうした室料の確保できていない現実が改めて認識できる。そこから導き出される答えは、大衆車として販売しなければならない商品の4割以上を軽自動車の価格で売っている現実だ。そこには、集客に足るブランド力の欠如だけでなく、前述した価格へのこだわりとその販売に終始する姿勢が見逃せない。これでは、どんなに頑張っても帳尻は合わない

それが「人数あってカネ足らず」の現状であり、背景には設定売価とマーケットプライスのギャップがある。といって、4割以上を占める軽自動車売価帯を一気に切り捨てるのは、実態に照らすと非現実的な理想論になってしまう。対処策は「ホップ・ステップ・ジャンプ」だ。ニーズを狙って商品企画を再構築する。それには、現状の予算と実績を解析することが欠かせない。想定した単価が実績で下回り、適正な室料が確保できないのならば、パブリックや料理、サービスのグレードを再検討して室料の確保できる商品企画を打ち出さなければならない。そして、価格に連動したサービスオペレーションが必要になってくる。
いずれにせよ、計画どおりにいかないのならば、どこの部分で価格が崩れているかを知ることが欠かせない。換言すれば販売企画の戦略と戦術のギャップを、販売・予約のあり方から料理原価やサービスグレードほかすべての部門について的確に把握しなければならないわけだ。そのためには「GOPログ解析」が必要なことを指摘しておきたい。

(つづく)