「求める理想は実現する」 その33
分析の項目区分と個々の意味あい

Press release
  2006.12.09/観光経済新聞

 前回はGOP設定へ向けた手順の概要を述べたが、詳細を述べる前にそれらに必要な分析の意味あいを整理しておく。全体としては、@決算書A予約実績B食事と売上の分類C現状プランの整理――などに大別できる。
1番目の決算書は、分析項目として「原価」と「売上」に分けられる。この中で原価は、@宿泊部門A大浴場部門B料飲部門(料理=厨房、宴会サービス=食事接客)Cパブリック営業部門について個々の原価を明確にすること(部門数はBの料飲部門を厨房と食事接客の個々に柱を建てた「5部門」の発想がレベニューマネジメント流)。また、原価の不動産償却と運営経費を区分けした上で、それぞれ「固定」と「比例」を明確にしておく必要がある。ただし、ここでの固定・比例は、いわゆる税務会計ガイドラインではなく、旅館版レベニューマネジメントに沿った区分けであることを付記しておきたい。
このうち原価分析は、4項目に分ける。第1は仕入原価と一般管理費だ。ただし、減価償却とリース料は別扱いとする。ここでは比例費と固定費の原価を上記の5部門について分析する。
原価分析の第2は、減価償却と支払利息、試算計上をされている「建物・設備・構築物・土地」に対して、カテゴリー別の不動産原価と不動産償却額を明確にすること。具体的には以下の3項目が挙げられる。1つ目は、客室、宴会場、厨房、浴場のu数を元に、資産額に対して「躯体」「外装」「内装」「電気」「給排水」「空調」のそれぞれについて原価を算出する。2つ目は「償却vs借入返済額」のギャップ原価を割出して「償却不良修正按分」によって修正する。3つ目は、支払利息を求めて修正する。
原価分析の第3は、什器備品や工具類の原価だが、第1で区分けした各部門固有のものは、前項(第2)に加えて修正する。第4は原価としてのリース料だ。これは、各部門特有のものは第1に加え、特有でないものは第2に加えてそれぞれ修正することになる。
一方、決算書分析の売上分析は、原価と同様レベニュー流5部門について「売上」と「粗利益」を明確にする。ただし、宿泊部門の「料理」と「宴会サービス」の売上については、冒頭Bの「食事と売上の分類」で明確にする。
 この売上分析では、宿泊売上とパブリック売上を分けて、それぞれの粗利益を明確にするのが狙い。詳細説明は別の機会に譲るが、要は前項の原価と「対の関係」にあることから、両者をレベニューマネジメントに基づく適正なカテゴリー区分の下で、厳正に明確化していくことが大前提だ。「売上あれど利益ナシ」「客数あってカネ足らず」などの現象は、両者の関係を無視して数字だけに囚われている現状を物語っている。
 2番目に予約実績の分析がある。ここでは、以下の4点を明確にする。
@部屋別・宴会場別の稼動状況
Aセグメント別稼動状況と売上金額
Bプラン別の稼動状況と売上金額
C料飲部門の「料理ランク」
 これについて旅館版レベニューマネジメントでは、1年間の日別分析と日別・月別・年間の分析シートを用意している。そして、これらを明確にすることによって客室実績では@部屋別稼働率A全館稼働率B部屋別宿泊単価Cセグメント別宿泊単価と構成比D宿泊単価別構成比と稼働率などが、宴会場・食事会場では@宴会場稼働率と食事・非食事の稼働率A朝食・昼食・夕食の稼働率B宿泊単価別の接客要員数と接客要員稼働率、プラン別では@客層セグメント別の構成比と人数Aプラン別の構成比と人数B料理ランク別構成比とランク単価――などが、それぞれ アウトプットされる。
3番目の食事と宿泊売上の分析は、料理ランク別の「調理原価」や「料理接客原価」を明確化するとともに、宿泊部門の売上を「宿泊売上」「調理売上」「接客売上」の3分割で明確化する。4番目の現状プランの整理は、基本プラン別の「売上定価」とプラン別に発生する「原価要因」を明確にする狙いがある。

(つづく)