「求める理想は実現する」 その23
不動産と料飲の徹底解析から

Press release
  2006.09.23/観光経済新聞

 今回から、実際の旅館版レベニューマネジメントの展開に入ろう。ステップ1は料金設定だ。ここでは、不動産部門と料飲部門に分けて考えなければならない。
まず、不動産部門は、客室、宴会場、パブリックの3つに区分する。また、パブリックは、浴場部分を料飲や売店部分とに分ける。人件費もカンパニー分析の発想で各部門に割り振っていく。そこで重要になるのが利益率と稼働率の設定だ。さらに、過剰投資をしてきた部分への補整値や償却した部分については、別枠(財務リストラ)で考えなければならない。償却については、本来の償却と簿価との不整合も適正化していく必要がある。こうしたさまざまな課題があることを、まず、念頭に置いておかなければならないが、そのあたりの詳細はケースバイケースといえる。ただ、旅館の場合は単なるレベニューマネジメントの手法(不動産中心)だけでは解決できず、そこに「旅館版」を開発しなければならない背景があったことを記すにとどめたい。
室料設定では、シーズナリティを加味した稼働率設定から逆算するだけでなく、個々の不動産特性の価値を適正に評価していく。例えば、同じ広さでも眺望や什器備品を含む内装といった諸要素を、ガイドラインに沿った指数などから数値化し、室料設定に反映させていくことも考えねばならない。加えて建物とコストの問題もある。
ここで大きな要素となるのが、稼働率をどように想定(設定)するかだ。単純に考えれば、稼働率を高く設定すれば、売上が増える計算になる。ゆえに、従来は高稼働を理想のように考える向きがある。だが、現実は高稼働至上といえない。運営コストを加味しなければならないからだ

結論からいえば筆者は、稼働率「70%」が一般的な旅館の水準になり得ると考えている。
一方、料飲部門については、調理と接客のグレード明確にすることが第一の課題であり、それを料金設定に反映させる。この場合の調理グレードとは、原価率だけでなく板前のグレード(加工技術)による「仕込み率」の発想も必要となる。例えば、居酒屋・割烹・料亭のような区分け発想で、トータルとしての料飲原価を再構築しなければならい。同様に接客サービスも考える必要がある。食事処、部屋食といった区分だけでなく、部屋食でも何回に分けて提供するかで運営コストは変ってくる。いわば、「接客サービス率」の発想のもとで、これらの利益率も勘案しておかなければならない。つまり、厨房と接客のそれぞれの原価率と利益率の設定を明確にしておくことが、全体の料金を考えるうえで不可欠だということ。したがって、客室、料飲と接客サービス、パブリックの3部門について詳細な設定を行い、それを合算して最終的な料金を設定する。
旅館版レベニューマネジメントでは、解析する項目が非常に多岐にわたり、しかも相関的な関連性を捉えながら全体を絶えず俯瞰するこが求められる。だが、それを難しいと諦める必要はない。以上のことは、あくまでも仕組みとして理解しておけばいい。実際にはコンピュータが処理する。そのために入力の簡便な「旅館版レベニューマネジメント」のシステムを開発したわけだ。ただ、仕組みとして理解するということは、入力のために必要な自社解析のための最低限のデータは、整備しなければならない。これがシステム稼動前の必要事項だ。ゆえに、旅館版レベニューマネジメントでは、導入プロセスの初期段階として適切なコンサルティング体制を確立している。
稼働率設定で欠かせないシーズナリティについては、地域特性ほかの条件に対処するために9〜10の分類を想定している。単純にいえば、室料の設定を100とした場合に、30%、50%をレスする「マイナス組立て」で基本は対応する。そのほか、正月といった特別需要時期については、個々の事情を勘案しながら対処していく。一律に何%アップといった単純計算、慣例や希望的観測での対処は避けなければならない。これも、周到なコンサルを必要とする部分の1つでもある。

(つづく)