レベニューマネジメントでは、すべての場面で「科学的予測」が重視される。裏返せば、旅館版レベニューマネジメントの手法を用いなければ、経営において最も重要なファクターである売上構築を経験則や勘が方向付けてしまう旧弊を脱却できない。
この科学的予測を具体的にいうならば、自館の顧客が「どのような宿泊単価」で「どのような企画(商品)」に対して「どのような地区から訪れているのか」といった現状を分析しなければならない、ということだ。
こうした分析を行った上で、自館の経営上から確保しなければならない売上高を見定める。いわば、健全経営に必要な売上高を意識しながら、そのための新企画(施策)を講じていくことになる。
この新しい企画を打ち出すためには、マーケットが何を求めているかを適切に把握しなければならない。その場合にいえることの1つに「マーケットプライス」というものがある。というのも、経営的に利益の出る部屋単価を設定したいのはやまやまだが、一方ではマーケットに支配されているといってもいい現実がある。換言すれば、マーケットプライスを無視した企画は、顧客に受け入れられないということ。いわば、企画を講じること自体が徒労でしかない。
では、どうするのか。具体的には、自分たちがやりたい経営とマーケットとの間にある「ギャップ分析」を行うことになる。このギャップ分析は、顧客のセグメントともいえる。一般的に分類すると、大きくは旅行エージェントと直(小間客)に二分できる。さらにエージェントを細分化すると、窓口(カウンター)とユニット(団体など)に区分けでき、そこにサイバーエージェントといった要因も加わる。一方、直の方は、地元客とその他地域の2つに大別できる。
これらを踏まえて、次に予算を組み立てる場合を考えてみよう。例えば、エージェントについて「去年はこれだけの送客があったから今年も同様に」と予算を組む。この場合に考えなくてはならないのが、どれだけの「人数」と「客単価」かということ。人数がどんなに多くても客単価が低ければ、必要とする予算は達成できない。そこでレベニューマネジメントでは「データクリーニング」という解析作業を行う。というのも客単価はマーケットプライスで売られた結果であって、エージェントが「決め打ち」したものに旅館側で手を加えることはできない。
余談だが、そうした点に関して将来的な解決方法はあるが、それを語るには若干時期尚早の感もあり、本稿では控えておきたい。ただ、旅館側が自館の企画や商品の力量(商品力)を高めることが欠かせない点だけは指摘しておきたい。
本題に戻ろう。いずれにしても、データクリーニングによって現状を把握し、予算に照らしながら適時施策を打たなければならない。
また、エージェントと同様に直(小間客)も分析する。平易にいえば「なぜお客さんがこないのか」を問う。この場合、料金が一般にいう「施設・料理・サービス」で決まるならば、自館の商品の陳腐は適正に把握し、是正しなければならない。それと、少々生臭い話ではあるが、他館の商品力や価格状況、あるいはイベントなども調査分析の対象となる。
さらに、セグメントをすることで、自館で「一番売れている層」が主力になるのは自明の理だ。その層を厚くする施策が、直販の商品企画ということにもなる。
つまり、エージェントと直販の両面から予算を構築し、これに対して先行予約解析を行い、予算達成に必要な客数・単価の状況を随時把握しておく。
肝心なことは、客層をセグメントし、どのタイミングにどんな価格で売るかを、経験や勘ではなく科学的予測に基づいて対応しなければならないということ。安売りをすればいいというものではない。あらゆる状況分析を行った上で、最終的な「落とし込み」を決定する。それがレベニューマネジメントでいう「フォーキャスト」なのだ。
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