「求める理想は実現する」 その15
組織と業務内容の見直し

Press release
  2006.07.29/観光経済新聞

 旅館の近代化経営ツール「総合経理システム」によるローコストオペレーションでは、@人件費のかかる経理システムを見直すA組織運営を見直すBマネジメントリリースの採用――の3点が基本。前回のシステム見直しに次いで、今回は組織運営の見直しとマネジメントリリースの採用について述べる。
ローコストオペレーションの2番目に掲げた組織見直しとは、「事務は事務屋に」といったスタンスでの改変を意味している。この例えは、主として用度の業務に該当する。
というのも例示した用度の業務は、従前の会社組織において一般的な慣例から一くくりにされていた。だが、構造改革のスタンスから内容を解析すると、実際には@発注A検収B買掛・未払金管理C物品管理など4カテゴリーに大別することができる。

問題は、この4カテゴリーの実態にある。検収や物品管理は現場に直結したものであり、喩えとしての適正は別にすると「荷役」ともいえる「モノ相手」の仕事だ。これに対して発注や買掛・未払金管理は、いわゆる「計数管理」であり、数値情報の管理ともいえる。このことは、すでに指摘してきたように、旧来の経理(計算管理・会計処理)に等しい概念でもある。(※構造改革では経理を「経営管理」と規定しているために、旧来の経理と異なる点が要注意事項)
つまり、業務内容を解析して適正に再編する構造改革の基本に照らした時、異質の業務を旧来の一般論のまま混在させることは許されない。いい換えれば、組み合わせてはならない業務を「用度」といった名称で一括しないことが肝心であり、こうした旧弊ともいえる状況が、他の部門にも少なからずある。前出の事務屋と対比するなら「荷役は荷役屋に」ということになる。

若干の余談になるが、前回の経理システムと今回の組織見直しにかかわる問題点を整理しておこう。実践コンサルを通じて筆者が最も多く耳にするのが、経理の適正人員に関するものだ。デスクワーク主体の経理業務は、帳簿やコンピュータディスプレイと格闘する姿を目にした多くの経営者は、「忙しそうに何時間も働いている」と思う半面、「いったい何の仕事をしているのだろう」と疑問を抱いている。実際に4人に3人が懐疑的な思いを抱いているというデータもある。そして、コスト削減へのパート化を模索する一方で、専門性が満たされないのではないかとも考え、そのジレンマから「しかたがない」との諦めに似た感慨のなかで現状を容認している。
また、組織の見直しも実はこうした諦観の延長線上にある。知識や専門性にとらわれた硬直化であり、経理や用度などで顕著にみられる。極論をいえば、創業期から組織改革をほとんど行っていないというケースが、実に半数近くもある。伝統の重視は旅館にとって大切なことだが、バックヤードにそれは当てはまらない。事務的な仕事がコンピュータで代替できることは、改めて説明するまでもない。担当者が代替機器の操作に馴染まないのと、専門性ゆえに代替できないというのは、まったく別の次元の話でしかないのだが、改革に踏み切ろうとしたときに、そうした現場に潜む「見せかけの専門性」が障害となっている。

本題に戻ろう。3番目のマネジメントリリースの採用とは、極論をいえば「給与にみあった作業を割り当てる」ということだ。現場の管理職が一般社員と同じようなレベルの仕事をしていたのでは、給与面でも整合性が欠ける。管理職の役割とは、一般事務社員が就業時間内に行うオペレーション業務をマネジメントし、作業状況に照らしながら、より多くの成果物を導きだせるよう適時に作業を割り当てることだ。それによって管理職も一般社員も「給与にふさわしいレベルの業務をこなしている」という結果が得られる。
構造改革では、こうしたマネジメントリリースを有効に機能させる上から、事務部門のオールラウンド(多機能化)を提唱しており、それを具体化させるシフト運営のシステムを構築し、他の近代経営ツールとも連動させている。

(つづく)