「求める理想は実現する」 その14
作業時間60%削減の真意

Press release
  2006.07.22/観光経済新聞

 旅館の近代化経営ツール「総合経理システム」は、前号で述べたように最終的には「成功する経営の哲学」だと位置付けられる

では、具体的に何をどうするかについて、順に紹介してみよう。
基本フレームは、前号で掲げた「徹底したローコストオペレーションの実践」と「営業利益15%以上は会社経営の絶対条件」に区分できる。下に示した「総合経理システムフロー図」の上2段の各項目がローコストオペレーションにかかわる部分であり、下2段が営業利益15%確保へ向けた重点事項の相関性だ。とりわけ下2段に示した施策は「これができれば部課長管理のノーベル賞もの」とさえいえそうな「カンパニー制度」に関するものである。今号では、基本フレームの第1であるローコストオペレーションを検証する。
ローコストオペレーションを実現させるためには、最初に見直さなければならないのが「人件費のかかる経理システム」そのものである。次いで、現行の「組織運営の適正度」を精査し、それを踏まえた「マネジメントリリースの採用」といったプロセスを辿ることになる。
このうち1番目に掲げている現行の「経理システムの見直し」とは、結論からいえば「人件費のかかる仕組み」を見直そうということであり、最終的には「作業時間60%以上の削減」を目指している。もっとも、作業時間を60%削減すれば人件費も60%削減できると考えるのはいささか短絡にすぎるが、状況に応じて削減効果が表れるのは確かだ。
若干の余談を加えるならば、こうした「人件費の削減効果」は結果であって、実は「作業時間を60%削減する」ことに関心をもってほしい。なぜ「削減できるのか」あるいは「削減しなければならないの」ということだ。すでに述べてきたように、経理への関り方に経営者の資質が表れている。筆者の立場で捉えれば、理屈抜きに「総合経理システム」が導入されれば、それはそれで十分なのだが、旅館の側に立ってみると根本的な解決とはいえない一面がある。とりあえず改善するための対症療法は不可欠だが、同時に根本的な体質改善にも努めて欲しいと思う筆者の老婆心でもある。
本題に戻ろう。作業時間が削減できるということは、逆にいえば削減を可能する要素が60%もあるということだ。それが、いわゆる「作業精度」の問題だ。精度が低ければ、再確認のための余計な手間と時間がかかる。現行制度では、そうした手間を「確実を期す二重三重のチェック」としているが、これは諦観を無理やり納得するための詭弁の感が否めない。ローコストオペレーションの観点から捉えると、現場の非効率に対する「労使の馴れ合い体質」の表れとしかいいようがないようだ。
システム見直の基本は、間違の発生源ともいえる「二重入力の排除」と速くて正確なコンピュータによる集計の導入だ。コンピュータ化の利点は改めて説明するまでもないが、肝心なことは旅館の「実情」を組み入れたシステムであること。旅館の経理と商社やコンビニの経理は違うのだ。それゆえに「総合経理システム」は、旅館において真価を発揮できると筆者は自負している。

(つづく)