「求める理想は実現する」 その132
客単価と料飲高の関係性(下)

Press release
  2009.4.11/観光経済新聞

 前回は、客単価が2万円〜6000円の旅館を例に客数、料飲高、室料の各項目について、その関係性を捉えてみた。GOPは、一応15%が確保されていた。これに対して「今どき…」の感を抱いた読者も少なくなかったようだ。実は、そこに上っていた諸数値は、現時点のものではい。各項目の関係性をバランスがとれていたケースから俯瞰するために、あえて例示したものだ。

では、現在の数値はどうなのか。それは、下表のようになっている。現状を端的に表しているのが、価格帯別の客数変化だ。GOP15%を確保してバランスを保っていた時点では、客単価1万円が全体の4割を占めてセグメントの中核となっていた。だが、現状は客単価8000円が50%を占めており、1万円超は35%(以前は75%)に減っている。

この表から読み取れる状況は、客数の合計だけをみると、以前と同じ1万人レベルをキープしているが、売上合計は9090万円で以前に比べると1700万円ほど低下している(以前は1億800万円)。俗に言う「価格志向」の状況を呈しているわけだ。

中核価格帯が下がって売上が減少したのに伴い、当然ながら料飲高も以前より700万円ほど少ない4535万円となった(以前は5275万円)。また、売上全体の9090万円から料飲高の合計4535万円を差し引いた室料(GOPを含む)の合計は4555万円となり、以前よりも1000万円近くダウンした。

これらの数値は、人数ベースこそ以前の状況を保っているが、収益内容が大幅に悪化したことを意味している。下表の太線内の数値が、その表れにほかならない。というのも、GOPを除いた室料は、客単価が低下しても同率で減る性質のものではないからだ。極論をいえば、施設規模やマネジメント形態が変わらない限り、それ自体の変化はないともいえる。つまり、売上合計が1700万円ほどダウンしても、GOPを除いた室料の3905万円(下表の参考値下段)は、経営を続けるには必要ということになる。

 そうなると、低価格にシフトした現在の室料4555万円から3905万円を差し引いた650万円が、最終的なGOPということになる。比率では「7%」となり、バランスがとれていた時点に比べると半減したわけだ。

ここで仮定の逆算をしてみよう。売上全体からGOP15%を確保できていた時の室料(GOP除く)を差し引いた額を、仮定の料飲高とすれば、現時点でも15%のGOPは残ることになる。つまり、料飲高を3565万円(料飲率39%)に抑えられればいい。実際の数値は、売上全体の分母が小さくなっているために、もう少し高い料飲率なるが、簡略化のためにここでは割愛する。

いずれにしても、客単価6000円で料飲高3500円というような下表3段目の「料飲高」の設定では、問題解決はできない。筆者が料飲高とオペレーションにこだわるのは、そこにGOP確保のカギがあるからだ。

(つづく)