「求める理想は実現する」 その131
客単価と料飲高の関係性(上)

Press release
  2009.4.4/観光経済新聞

旅館経営は「未体験ゾーンに入った」との観点から、GOPを確保するための方策を述べてきた。とりわけ、単価に占める料飲率が大きな意味をもっている。なぜならば、食材原価と厨房での加工、それに配膳どの接遇や下膳後の食器洗浄なにかかわる人件費をすべて包含した諸コストが、単価に対してどれほどの額になっているかをシビアに捉える必要性があるためだ。(比率だけではイメージしにくいために、具体的な金額に置き換えた「料飲高」の用語を数回前から併用している点に留意いただきたい)

この単価と料飲高の関係については、細述を求める声が寄せられていることから、マクロ的な視点で改めて記してみたい。

下の表は、客単価が上は2万円から下が6000円までの幅広い客層に対応している旅館について、客数、料飲高、室料の各項目をサンプリングしたものだ。料飲高については前記の諸コストを合算したものであり、室料の項目には一般販売管理費のほか、GOPとして売上の15%をデポジットしている。これら料飲高と室料の捉え方は。右上の図のようになる(詳細は本稿117回を参照)。

余談だが、GOPとして「15%を確保しよう」とするのと、最初から15%をデポジットした85%の金額で「この予算内に収めよ」とする違いは大きい。前者の場合は、GOP15%が未達であっても「経費削減に努めたが…」といった言い訳のまかり通る余地が多分にある。これに対して後者は、経費の予算オーバーが数字として歴然と表れる。そこに弁解の余地はない。未体験ゾーンのでの経営では、さまざまな面で発想の転換が欠かせないわけだ。

さて、本題に戻ろう。下表の事例にある旅館では、客単価1万円が全体の4割を占め、セグメントの中核となっている。客単価別の料飲率は、高額帯(2万円)40%だが、価格帯が下がるにつれて比率が高くなっている。全体として捉えた場合(下表の太線枠内)、料飲高の合計は売上合計の49%に収まっている。これは、高額帯で得た室料の余力で定額帯の高料飲率を補う「貢ぎの構造」になっているが、それでもGOPは15%を確保しており、全体として一応のバランスがとれている。

また、売上全体の1億800万円から料飲高の合計5275万円を差し引いた室料の合計は5525万円となり、当然ながらそこにはGOPの15%がデポジットされている。したがって、上図に示した宿泊部門の人件費と一般販売管理費の合計は3905万円で収まっているということになる。

ただし、結果論としてそうした数値をあげたのではなく、単価別の現状分析とそれを踏まえた客数予測をはじめとするレベニューマネジメントが、GOP15%をデポジットした予算化の効果といえる。逆に、それをしていない場合は、予算に「弛(ゆる)み」を招きかねない。

(つづく)