「求める理想は実現する」 その13
経営資質が問われる経理

Press release
  2006.07.15/観光経済新聞

 構造改革による旅館の近代化経営ツール群のシリーズ4弾として開発したのが「総合経理システム」だ。開発の背景については、プロローグとして前2回に分けて述べた。ポイントは、現状の経理や事務部門を構造改革の視点で捉えた時、「人の動き」や「物の動き」がローコストオペレーションのセオリーに照らして、あまりにもムリ・ムラ・ムダが多すぎるということだ。それらに対するソリューションとして「総合経理システム」が位置づけられる。
一方、現状の旅館での経理部門は、前回指摘したように経営者の認識、ないしは取組み姿勢で大きな違いが表れている。車の選択に喩えるならば、排気量が大きく豪華で乗り心地がいい大型車、あるいは小回りが利いて安価な大衆車――などが主流派で、時代のニーズを捉えたエコカーの選択は少数派といった現状に似ている。いうまでもなく、大型車は見た目こそ立派だが経済性は別もの。逆に大衆車はその場しのぎで、いずれは大型へ乗換えなどの潜在願望も否定できない。どちらのケースも「移動手段」の域を脱したモチベーションはない。これに対してエコカーは、購入時のイニシャルコストを比較すれば割高感が否定できないし、イニシャルコストからランニングコストまでトータルで比較したとしても、割安とはいい切れないだろう。それでもなお選択へのモチベーションが働くとすれば、車の機能であるトランスポートだけを目的にしたものではなく、将来の地球環境まで見据えたフィロソフィーが背景にあるからだ。
経理に対する経営者の姿勢に当てはめるならば、大型車はハイコストでオペレーション不在の放漫経営であり、大衆車は現状に照らして「これしかできない」といった諦観経営ともいえよう。これに対してエコカーを選択する経営者は、経理を旧態然とした「会計業務」ではなく、プラスアルファの因子を加味している。また、経理部からアウトプットされる会計数字の結果だけでなく、自ら経営戦略を展開する上で日々大きな関心を寄せて対応している。どちらの経営者を善しとするかは、改めていうまでもない。
さて、近代経営ツールとしての「総合経理システム」は、大型車・大衆車派のためのオペレーションシステムなのか、エコカー派の経営戦略ツールなのか――という疑問を抱く読者がいるかも知れない。結論からいえば、両者の要求を満たすステップアップツールなのだ。基本的なシステムのほかに、必要に応じてより高度化するためのアセンブリーシステムがあり、これらを組み込むことで理想の経理を実現する。
さて、前2回のプロローグでは触れなかった重要事項が、実は車選びになぞらえた経営者の資質、いわば経営マインドの問題だ。いい換えれば、経営者としての真価を問われるのが、経理への関与の仕方ということになる。なぜならば、構造改革の視点で「経理」を捉えた結果として「経理は単なる『計算管理(会計処理)』ではない、『経営管理』の略称である」といえるからだ。そして、経営管理の観点から企業を捉えると「営業利益の15%以上は会社のノルマである」という最終的な目標に到達する。この目標達成こそが「経営哲学」の根幹なのだ。経営哲学とは、まさしく経営者のマインドであり資質にほかならない。
このような観点から「総合経理システム」の基本フレームを説明すると、次の2つの要素に集約できる。第1が「徹底したローコストオペレーションの実践」であり、第2が「営業利益15%以上は会社経営の絶対条件」だ。若干乱暴ないい方だが、第1が「手段」であり、第2を「目的」と位置づけることもできる。あるいは、哲学的な三段論法にあてはめるならば、放漫経営で見過ごしていた経営肥満や諦観経営で押し殺していた(直視しなかった)経営不満を、改めて問題視すること。それをテーゼとすれば、第1の手段は実践的なジンテーゼであり、その結果として第2の実践的アウフヘーベンとしての営業利益へと到達する。つまり、システムとしてのローコスト化と、経営者のマインドの両面を支援するシステムなのだ。

(つづく)