「求める理想は実現する」 その129
新しい宴会手法の模索が必要

Press release
  2009.3.21/観光経済新聞

 GOPを確保するためには、単価に占める料飲率が大きな意味をもっている。言い換えれば、食材原価と厨房での加工と配膳などの接遇にかかわる人件費を合わせた「料飲高」が、どれほどの額になっているかをシビアに捉えることだ。

とりわけ価格志向が高まっている状況下では、食事での満足度が重要であり、それに伴って食事の提供形態が問われる。端的に言えば、好きなものをチョイスできるバイキング形式か、会席を主流にした部屋出し・食事処・宴会形式に分かれる。前回は、バイキング形式でのオペレーションに触れたが、今回は部屋出しと宴会を考えてみたい。

このうち部屋出しについては、価格セグメントとの兼ね合いで「諸刃の剣」になった事例を紹介してみよう。通常の単価が2万円を超えており、食事(部屋食)では定評のあるA館が1万5000円の企画を打ち出した。その単価になると、料飲高は当然ながら下がる。食材原価を下げるか、あるいは厨房の調理や接待係の持ち部屋数など人件費で調整することになる。いずれにしても、定評どおりの重厚な対応より軽いものにならざるを得なかった。問題は、その価格で利用した客から「評判ほどではない」と評価されたことであり、その意味では「諸刃の剣」になるということだ。オペレーションの重要性に対する認識に欠けていた結果ともいえる。この問題については、別の機会に細術したい。

次に宴会についても料飲高にみあった「宴会手法」を編み出すことが、今後の大きな課題といえる。通常の宴会場をイメージしたとき、銘々膳に先付けをセッティングし、宴会の進行にあわせて料理を運びこむ。接待係は、まさにてんてこ舞いで動き回る。それをスムースに運ぶには、接待係を多用しなければならない。「接待係は客何人に1人」と要求され、料飲率を勘案すると単価以上に配置しなければならないケースも少なくない。そうなると、料飲高が室料を圧迫してGOPが確保できないわけだ。

余談だが、「安い客層(団体)ほど要求がきつい」と言った笑うに笑えない話が、現実にまかり通っている。しかも、客の要求に唯々諾々とした営業が接遇現場にそれを要求し、現場もそれを受けるなどの話になると、営業担当だけでなく全社レベルでの原価意識に疑問を抱かざるを得ない。

本題に戻ろう。ゆえに、料飲高にみあった宴会手法が、厳しい状況下でGOPを確保するには欠かせないということになる。ここでも最大の課題は、料飲高にみあったオペレーションの確立ということになる。そうした場合に必ず出るのが「宴会の料理進行には決まった形があって、ほかのオペレーションはあり得ない」と言う声だ。しかし、果たしてそうなのか。答えは「否」だ。そうした声の背景には「宴会料理=会席料理」の発想しかない。

新しい宴会手法を考えてみよう。宴会場に先付け料理をセットするまでは同じだが、先付けだけならばパート従業員でコト足りる。また、後出し料理に関しては、可能な限り人手をかけない形をとる。蓋ものや茶わん蒸しなどは、蒸籠に入れて宴会場に用意する。揚げ物や焼き物は、板前が宴会場に出てそこで調理をする。客は、自分の食べたい物を取って、好きなだけ食べることになる。それを、バイキング料理の変形と捉えるのではなく、宴会食のエンターテイメント化と捉える発想が求められる。つくり置いて冷めかけた料理よりも(温蔵庫で保管していたにしても)、目の前のつくりたての方が値打ちは格段に違う。それがパフォーマンスであり、客側にはエンターテイメントとして映るのだ。

ひるがえって、バイキング形式が定着した背景には、型にはまった会席料理ではなく「チョイスできる料理を」と言う客側のニーズと、低価格でも採算が合う料理を模索した提供側の手法とが合致して、形づくられた料理形式だといえる。肝心なことは「双方が満足」のできる方式だという点を見逃してならない。そこに発想の原点がある。