「求める理想は実現する」 その122
料飲率の可変で品質も向上へ

Press release
  2008.12.20./観光経済新聞

前号では、旅館経営に欠くことのできない「数値」からの観点として、GOPの「15%」が筆頭格だと述べた。若干の補足を加えるならば、15%は中長期の展望に立った健全経営から必要とされる数値だといえる。しかし、それだけではなく短期的な観点も必要であり、例えば修理という名の下で行われる細かな再投資も欠かせない。これは、GOPの15%とは別枠で考えておく必要がある。
そのために、館内消費の純利益を「余剰利益」としてキープしておく必要があると述べた。館内消費の純利益は、筆者が算定したところでは年商の4%程度になる。つまり、GOPの15%と館内消費の4%を合わせた19%をデポジットすることが、実は経営をスムースに回すためには欠かせない「数値」といえる。
こうした観点を踏まえながら前々回(119回)のGOPケーススタディを再検証してみよう。この旅館では、GOP15%の確保に対して、実際には2.5%の低率にとどまっていた。では、不足分をどう対処するか。もっとも単純な発想は、単価をあげることだ。与件から算出した結果では、GOP15%を弾き出すには単価の不足分である829円を上乗せして、2万829円に単価アップすることだ。しかし、これが現実に照らしたとき適正な選択肢とはいえないし、可能な状況ならすでに実行しているはずだ。それをできなかったのが、この数字に表れている結果にほかならない。
そうした状況下で、実際にとるべき方策としては、コストダウンが挙げられる。ただし、その方法論によっては効果が期待できるどころか、逆効果を生み出しかねない諸刃の剣でもある。
前段として説明を加えておく必要があるのは、GOP15%を確保するための客単価に対する料飲率の目安だ。実際には、客単価1万5000円以上なら50%、1万〜1万5000円は40%、1万円以下は30%でオペレーションする必要がある。つまり、客単価に見合った料飲率のスライドが不可欠といえる。そして、これまでも度々述べているように、料飲率とは従来の料理原価と位置付けられていた材料費のほかに、板前やパートなどの厨房人件費、できた料理の運搬や片づけに要する料理輸送費、客に供するときの接客人件費、そして片づけた後の食器洗浄までをトータルで捉えるということである。言い換えれば、運営マネジメントが確立されていなければ、この数値目安は絵に描いた餅であり、オペレーションも成り立たないし、効果もない。
 下の図は、GOPを確保できない理由(116回)で示したものに、上記のことがらを加味したものだ。料飲率と室料がともに50%で、GOPも確保できる妥当な単価(A)に対して、単価が下がった場合に料飲率をどう変化させるか(a-1〜a-3)を3つのケースで表している。
 基本的には、単価が下がっても同じ客室である限り部屋の価値が下がるわけではない。したがって、料飲率を下げて室料を確保しなければならない(a-3)。ところが、料飲率を下げて、材料費をはじめ包含される諸コストを比例的に圧縮すれば、当然ながら商品価値が下がってしまい、結果として客離れにつながってしまう。これが、従来パターンでの発想だ(b-1)。
 これに対して、材料費は従来以上にアップさせて料理の評判も高める方法がある(b-2)。そして、これを具体化させるのがオペレーションの変更にほかならない。諸コストの内容を精査する必要性を前回は述べたが、それだけで解決に至るケースは少ない。抜本解決には、オペレーションの変更が必要となってくる。


(つづく)

  質問箱へ