前回は、客数に連動した運営システム構築の4段階のステップ(@接客部門のオールラウンド運営A事務部門のオールラウンド運営B夕食運営の見直しC料理全般の見直し)の@とAの取り組みを示した。この2ステップは、接客コストの人件費部分にウェートを置いた第1段階と言える。これに対して第2段は、料理運営コストをトータルで俯瞰したより高次な対応となる。
ステップ3の夕食運営の見直しとは、宴会食方式の見直しでもある。具体的には、宿泊単価別の「夕食料理運営コスト」と「朝食料理運営コスト」を定めることだ。これは、GOP確保に不可欠な「適正室料の確保」と位置付けられる。手法として捉えると、調理人による「座店料理運営」(宴会座敷で実演する運営)をはじめ、旅館個々の特色を打ち出す工夫の余地が多分にある部分とも言える。また、こうした手法は料理でのCS向上につながると同時に、接客係の宴会客数の持ち人数を減少する一面もある。いわば、料理人の接客要員化と言ってもいい。課題としては、「低価格団体の時間差開宴」や「3分割宴会プログラム」などの新たな対応が求められる。
ステップ4の料理の見直しとは、料理運営コストの「調理コスト」(ほかに「間接コスト」や「接客コスト」がある)の食材原価率、調理場人件比率の全廃を行い、調理人による「メニュー開発才覚のオールコスト方式」によって、各ランクの料理見直しを行う狙いがある。こうした料理の見直しには、各料金帯での「料理CSの向上」が、メリットそして期待できる。一方で、調理場の「タテ割り型調理方式」から「調理プロセスや技術レベルに応じた調理方式」への変革が課題とも言える。
これら第2段階での運営コスト見直しが必要とされる背景を簡略に整理しておこう。GOPの観点から「出る・出ない」のメカニズムを整理してみよう(左表参照)。出ていな現状(左表下段)をみると、@低価格対で室料が確保できていないA単価による料理運営コストの開きが小さいB夕食の料理運営コストで差別化がないC朝食運営でも差別化がない――などが挙げられる。視点を換えれば、高額客の満足度への配慮が欠けている一方、低額客には必要を越えた優遇をしている。つまり、全体のバランスが欠けており、放置すれば低額客の満足の高まりによって、さらに低額化の進む自縄自縛状態にある。これでは先が思いやられる。一方、GOPが出ている状況は健全であり、この方向を範とすべきなのは言をまたない。(つづく)
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