前回は、業務における3つの動き(@人の動きAモノの動きB意識の動)と業務内容、業務レベルについて述べた。これらを実際の作業者に当てはめてみよう(右図参照)。
例えば、経営者が事務の現場(予約部署)見たと仮定しよう。お客からの予約をはじめ、一般的に「相手がある」といわれる部門では、いわゆる「待ちの姿勢」が強い。実際の現場風景としては、「いつでも対応できる体制」と言う大義が生じ、実態として「待ちだけ」の業務態勢を正当化させている。もちろん、待ちの間に他の作業をやらせているケースもあるが、錬度の高い担当者であれば大義を振りかざし、錬度が低ければ待ち時間に与えられた他の作業に追われて、本来の業務がおろそかになるなど、業務への錬度のいかんを問わず隙間作業の効果は疑わしい。
一方で経営者には、目いっぱいの作業と映る。むしろ、人手の足りなさを見せつけける結果にもなり、現状の人員構成で他の業務分野への労働力再配分を阻害しかねない。
なぜそうした捉え方になってしまうのか。結論からいえば、目先の光景(人の動き)だけを見て、作業の内実(モノの動き)を捉えていないためだ。人の動きは、総じて表面的な状況に過ぎないことが多い。決して社員を疑うものではないが、仮にその時間がアイドルタイムだったとしても、経営者の前では忙しげに振舞ってしまう。日本的な職場の慣習といえばそれまでだが、厳しい経営環境の下にあっては、社員とともにそれを打破するシステムを求める必要があると筆者は考えている。これまでに開発してきた配膳システムをはじめとする一連のシステム群は、そうした現状に応えるものでもある。
我田引水はさておき、事務系でも裏方でも、そして接客でも一般職の業務は、概ねタテ割りに組まれた部署の単純作業が大半を占めている(上図)。それ以外に前述した「隙間作業」が、不明瞭な形で取り込まれているのが現状だ。
例えば、事務所の用度係が飲材を補充にあったっているが、これは裏方の業務だし、あるいはフロント係が携わっている当日の受け入れ準備や部屋割づくりは事務所の業務。こうした混在ぶりは、枚挙にいとまがない。これら混在する業務をシャッフルして、大別した3ジャンルへの統廃合と作業の平準化がオールラウンドのマルチタスクに向かう第一歩だ。
マルチタスクには、前述のアイドルタイムの活用だけでなく、時間差による業務の見直しもある。例えば、食器を洗う作業は、夕食の後から翌日の夕食準備が始まるまでの時間がある。直後の夜でも翌日の昼間でも構わない。業務は「いつから始めて、いつ終わるか」が決められている。つまり、3つの動きと業務内容、業務レベルを前提に、アイドルタイムやモノの動き、お客の動線に併せた時間差を大局的に捉えて再構築することで、オールラウンドが可能となる。(つづく)
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