「求める理想は実現する」 その119
「室料の確保」へ一層の執着を

Press release
  2008.11.22/観光経済新聞

本シリーズでは、新しい概念の「料飲率」と「室料」を取り上げている。繰り返しになるが、料飲率とは、従来の料理原価と位置付けられていた食材原価のほかに、板前やパートなどの厨房人件費、できた料理の運搬や片づけに要する料理輸送費、客に供するときの接客人件費、そして片づけた後の食器洗浄まですべてを包含している。
この料飲率にこだわる最大の理由は、販売単価によってすべてを可変させなければ、最終的な整合(GOP)が得られないためだ。従来の「原材料費=料理原価」の発想では、単価が8000円と1万円の違いを妥当とするために、仕入れ原価の異なる食材、あるいは品数(皿数)などで帳尻合わせをしてきた。その場合でも、原価の違う材料を使えば厨房作業で余計な仕分けが必要になるなどの理由から、メニュー構成(品数)で調整するケースが多かった。例えば、宿泊単価8000円を基本料理とし、それに「プラスα」の料理で単価1万円に仕立て上げるというやり方だ。それによって、厨房での料理原価に多少の違いは生じる。
だが、これでは抜本的な対応策にはなっていない。料理輸送や接客、食器洗浄などのオペレーションコストが不明解だからだ。若干の語弊はあるが、単価に8000円から1万5000円までの違いに対して、最多価格帯を標準単価として指数を「1」とするなら、8000円は「0.9」、1万5000円は「1.2」とするような発想の下で、全体を掌握した予算化を図ることにほかならない。例えば、食器洗浄にしても単価が1万5000円ならば相応に高価な食器を使い、あるいは器の数が増えるなど、洗浄コストも若干高めの設定が必要だ。その辺りの指数設定がユニフォームシステムの真髄であり、いわばノウハウの凝縮されている部分といえる。
そして最終的には、料飲率と室料との整合を図らねばならない。室料は、すでに述べたように、GOPと宿泊にかかわる部門の運営費、一般販売管理費を加算したものといえる。数式的に表すならば、[返済原資+一般販管費+GOP]となり、一般販管費に若干の変動性があったとしても、年間の総額は客室タイプ別に[室料×365日×稼働率(70%)]として算出したもの総和となる。この発想の下で客室タイプを特定した1人あたり売価は、次の数式となる。
[(料飲率×利用人数)+室料]÷人数
つまり、宿泊人数の変化によって1人あたり売価は変化するが、室料は推算した一定額をキープできる。肝心なことは、GOPをいかに確保するかであり、そのためには料飲率の可変性がカギとなってくる。これをイメージ化したのが下の図だ。
図の左側(before)は、単価1万円に対して5000円の室料が適正な整合と仮定できる客室タイプ(before・中)では、料飲率は当然5000円になる。この客室タイプでは、料飲率を可変させずに8000円で販売すると室料が不足し(同・左)、1万円超では室料は多くなるが(同・右)、売価に対する満足度で問題が生じる。それらを調整するために料飲率を可変させたのが右側(after)だ。
余談ではあるが、こうした発想とは無縁の旅館に行き当たったことがある。この旅館では、2人でも3人でも単価は1万8000円だ。仮に室料が1万円で料飲率が8000円だとすれば、前出の計算に当てはめると[(料飲率8000円×2人)+室料1万円]で合計2万6000円(1人1万3000円)であり、その実態には驚いた。
上記の旅館は乱暴に過ぎるが、GOPを確実にキープするためには、客室タイプ別の詳細な室料と料飲率への関心を、もっと高めてほしいと考える。




(つづく)

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