前回は、自社の標準単価(自社のほしい価格帯)に対する適正度の見極めについて触れた。標準単価の設定要素として、@客室のハードAパブリック全体のハードB接遇体勢などソフトC料理グレード――などの客観的な評価指針の必要性を述べた。
このうち、客室やパブリックのハード面は、スペック(仕様)を基に一定の数値化が可能だ。また、接遇体勢も接客係1人が何人のお客に対応するかによって一定の数値評価ができよう。ただし、接客は個々の接客係の業務に対する練度、あるいは個人的資質に負う部分も少なくないことから、社内の教育体制や人事考課制度をはじめ、外部機関によるサービス検定などと併用した判断が必要になる。
同様に料理提供は、提供する場所や提供方法、それにかかわる接客係数などで一定の数値化は可能だが、食に対する好みは千差万別であって単一の評価は難しい。
つまり、標準基準を考える上で、サービスや料理の内容については、目安となる数値化要素と経営理念から、経営者の判断に委ねられる要素が含まれるということだ。そこでの客観性に問題がなければ、前段のハード部分とリンクさせた一定の指針を設けることは、可能といえる。
実は、筆者もこの観点から指針となる規準計算式の策定を試みた。実際には、詳細な条件設定が必要となり、それへの回答が膨大な量となるために、現時点では時期尚早と判断して一時中断している経緯がある。
今回は、客観的評価の必要性という観点から、計算式の概念を記してみたい。前述のようにハード面のスペック(下表参照=客室部分)は、容易に数値化できるが、客室全体や家具調度品のグレード、眺望などは単純に評価できない。このため細部の付加条件として、客室では内装の新装改修からの経年ほかで24項目を設定。以下、家具調度13項目、客室からの眺望12項目、寝具アメニティ13項目、水回り環境清掃17項目、客室のバリアフリー11項目など、これだけで90項目の設問がある。
このほか全体では、大浴場はじめフロント体制や出迎え要員、外国人対応、料飲や売店、娯楽施設、駐車場などパブリック関連の諸施設、そして夕食や朝食の提供場所、提供方法、接待要員数などを網羅すると、膨大な設問となる。
しかも、それぞれの回答は、条件に合わせて適切な係数で処理しなければならない。例えば、客室の12.5畳は、1畳1000円で単純計算をすれば1万2000円(表中の暫定価格)となるが、8畳と15畳も同じ単価1000円で計算できるわけがない。さらに、前述した付帯項目を反映させることで、部屋単体として売価の指針が算出されるわけだ。
前回、投資額から単価を単純算出するのは乱暴と記したが、今日そうした方法は通じない。個別の計算を通して、売価の根拠を見据えること。その部分を明確にすることで、必要とする適正なGOP比率も、一段と鮮明になるものと考えられる。これは1旅館だけでなく、業界として必要だと筆者は思う。(つづく)
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