「儲けるための旅館経営」 その61
人数に合わせ可能な方法模索

Press release
  2010.11.27/観光経済新聞

前回、年商と平均給与額によって「GOP15%確保」に必要な社員数は計算できると述べた。言い換えれば、総コストの中で人件費のウエートが高いことから、人件費にメスを入れることが当面の経営課題と言える。その入れ方として、新しい「社員定数」の概念を提唱してきた。

これまでの旅館経営では、シーズン波動や価格帯別の対応を前提に人員構成を捉えてきた。結果として、消費額の合計である年商に対して、GOPが10%にも満たない状況さえ「やむなし」とする捉え方が、悪い意味で定着してきた感が否めない。これに対して新しい社員定数の概念は、年商に対して社員数を確定し、それに見合ったオペレーションの再構築を前提にしている。

定数の概念を説明する前に、払拭しておかなければならない旅館業の常識がある。前々回までに述べたことと重複する部分もあるが、最も肝心なことは、「理論と現実は違う」と言う捉え方を最初に払拭してほしい。旅館業に限らず、われわれは現実(実態=事実)を何よりも確かなものと無批判に認める傾向がある。例えば、10人で行っている作業を8人で行おうとした場合、「10人でも目一杯なのに8人でできるわけがない」と考える。実態を現実と捉え、理屈とは違うとする論拠になっている。そして実態を検証せずに、事実として無批判に受け入れてしまう要素がそこにある。

しかし、実態を検証することで「ムリ・ムラ・ムダ」を洗い出し、10人を8人にすることは可能だ。また、旅館の業務ならば、年間を通した変形労働時間の採用や効率的なシステム機器の導入など、方法はケースバイケースでいかようにも考えられる。したがって社員定数の概念は、決して理論だけの話ではない。

さて、100室規模で年商10億円の旅館をシミュレーションしてみよう(下表参照)。前提は、従来の事例から実証的に割り出した人件費28%(第60回参照)。それに基づく適正社員数は93人となる。

まず、稼働率と実勢定員の関係をみる(ここでは計算をしやすくするため2人を想定。3人なら表中の単価を2倍して3で割れば算出できる可変性)。総勢93人の社員で、単価別の対応をイメージすれば、当然ながら高単価客には多くの手が掛けられるし、低単価客には相応の対応しかできない。 もちろん、1館の単価は単一ではないが、それがどのような組み合わせであっても、最終的に年商となって数字に表れる額面の10億円は変わらない。この年商10億円は、次年度の予算額であっても意味合いは変わらない。

結論として言えることは、
GOP
15%を確保できる適正社員数で、どのような館内オペレーションを構築するかにある。
高単価での部屋出しや食事処、 低単価でのバイキング形式など、食材原価の設定方法や接遇サービス形態の組み合わせを、常識で「不可能」と判断しないことが肝要。
それには、適正な社員数を見定めることが先決だ。(つづく)