◆検証4
ケーススタディ4回目の旅館は、客室規模97室、平均客単価1万2000円、年商10億円でGOPが15%。現在の社員数は76人(内訳は下表参照)となっている。
同館のコストバランスは、平均客単価が1万2000円であることから、売上の50%弱が目安になる(便宜上50%換算)。50%の内訳はこれまでと同様に、人件費を28%とすると原材料と備品などが22%となる。これに照らした現状は、社員76人と外注費を加えた人件費関連総額が、およそ2億8000万円強で、総売上の28%に収まっている。外注は年商の3%である3000万円にとどまる。
◎GOP15%の背景
食事提供の形態は、夕食は個人客の場合が食事処、団体客が宴会場、朝食は個人、団体ともにバイキングとなっている。個人・団体の夕食の料飲率(料理提供にかかわる総掛かりコスト)は、平均単価の1万2000円と提供形態を秤にかけると限界点に近いかもしれないが、朝食をバイキング形式にすることで単価に見合った食事形態といえそうだ。
全体にバランスのとれた運営形態であるとともに、稼働率が比較的高いこともあってGOP15%を弾き出している。
◎社員定数の観点
オールラウンド化と3階層運営による社員定数は、@事務系+フロント・ラウンジA客室(レストランを含む)Bその他(厨房+後方部門+設備など)の比率が、「3:3:4」になるのが基本。同館の場合は、概算で「3.5:2.5:4」の構成比となっている。また、巨視的には@+A対Bの関係(6:4)であり、その意味では「ほぼ基本形」の範囲で落ち着いている。したがって、社員定数としては、これまでの3例とは違う好例といえよう。
とりわけ注目できるのが、B(厨房+後方部門+設備など)の内訳だ。日常運営で欠かせないほとんどの業務に社員を張り付けている。前回のケース3は正反対の0人で、すべて外注に依存していた。このため外注費が今回のケース4の2.5倍に達し、GOPを目減りさせる要因になっていた。本シリーズでは、パートの社員化といった切り口で、パートや外注より社員化の方が人件費効率の高いことを指摘してきた。また、オールラウンド化や3階層運営の最終段階でBへの取り組みが欠かせない。いずれ稿を改めて細述を考えている。
◎GOPアップへ向けて
同館のケースでは、コストバランスの面を捉える限り社員定員は妥当だが、 前述の構成比「3.5:2.5:4」は改善の余地がある。端的に指摘すれば、@の比率が高い。とりわけ事務部門の16人体勢は、
他部門に比べてコストを肥大させている。事務部門16人とフロント11人の27人体勢を19人(現状比70%)に組み替えることで、GOPはさらに2%前後の上積みが可能だ。
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