◆検証3
ケーススタディ3回目の旅館は、客室規模79室、平均客単価1万1000円、年商4.8億3000万円でGOPが7%。現在の社員数は51人(内訳は下表参照)となっている。
同館のコストバランス(売上に対する人件費、原材料、消耗品と備品補充の合計)は、平均客単価が1万1000円であることから、売上の50%弱が目安になる(便宜上50%換算)。50%の内訳は前2回と同様に、人件費を28%とすると原材料と備品などが22%。これに対して現状は、社員51人と外注費を加えた人件費関連総額が、約1億9000万円強で総売上の40%に達しており、コストバランスの面で12%の超過となっている。ちなみに外注は、客室清掃とパブリック清掃、布団敷き、浴場などで年間で7500万円を計上している。
◎GOP7%の背景
食事提供の形態は、個人客の場合で夕食が部屋食、朝食が食事処、団体の場合は夕食と朝食がともに宴会場となっている。個人・団体の夕食の料飲率(料理提供にかかわる総掛かりコスト)が高くなっており、平均客単価の1万1100円に照らしたとき適正な料飲率といえない。
また、平均客単価と稼働率の両面で厳しい状況に置かれている。したがって、GOPも1ケタ台の7%にとどまっている。
◎社員定数の観点
オールラウンド化と3階層運営による社員定数は、@事務系+フロント・ラウンジA客室(レストランを含む)Bその他(厨房+後方部門+設備など)の比率が「3:3:4」になるのが基本。同館の場合、全体の構成比でみると@が過大で、Bが過小ともいえる状況にあるが、客室規模に照らしたとき@が過大とはいえない。むしろ、Bの後方部門が0人でをすべて外注に頼っているために、外注費の肥大している点が問題視される。その結果、全体として社員定数と構成のバランスを欠いており、総数51人を額面通りには評価できない。
◎GOPアップへ向けて
同館のケースでは、コストバランスの人件費関連総額12%超を解消することが、最優先課題となる。この12%は、人員に換算した場合25人に相当する。ただし、総数51人の現状に対して25人は半数への圧縮ということになり、直近の施策として非現実的な対応に近い。
そこで、現状の51人を約2割圧縮した40人体勢にするとともに、Bの0人と外注費の7500万円にメスを入れる必要がある。
例えば、客室規模数でほぼ近似値であった前回のケーススタディ2(78室)のように、Bを8人、外注費4000万円前後
(平均客単価との兼ね合いを勘案)とした場合、人件費全体では3500万円程度の圧縮となる。これは、GOPに換算すると7%強に相当する。
現状の7%に合算すれば14%強となり、現在の経営環境で必要とされるGOP15%をほぼ達成できる。
|