「儲けるための旅館経営」 その49
昼食対応が定数の負荷を拡大

Press release
  2010.8.28/観光経済新聞

◆検証2

ケーススタディ2回目の旅館は、客室規模78室、平均客単価1万4500円、年商103000万円でGOPが11%となっている。現在の社員数は91人(内訳は下表参照)を数える。
 同館のコストバランス(売上に対する人件費、原材料、消耗品と備品補充の合計)は、平均客単価が1万4500円であることから、売上の50%が目安になる。50%の内訳は、人件費を28%とすると原材料と備品などが22%となる。これに対して現状は、社員91人と外注費を加えた人件費関連総額が、およそ3億5000万円強で総売上の34%に達しており、コストバランスの面で6%の超過となっている。ちなみに外注は、客室清掃とパブリック清掃、布団敷き、食器洗浄などで年間で4500万円を計上している。

◎GOP11%の背景

食事提供の形態は、夕食は個人客の場合が食事処、団体客が宴会場、朝食は個人、団体ともにバイキングとなっている。個人・団体の夕食の料飲率(料理提供にかかわる総掛かりコスト)は高めだが、朝食をバイキング形式にすることで帳尻を抑える感じになっている。平均客単価の1万4500円に見合った食事形態といえそうだ。
 また、平均客単価が比較的高いだけでなく稼働率の面でも、現状では高い部類に属している。したがって、GOPが11%にとどまっている要因は、宿泊部門の食事提供以外にある。それが、年商の約1割強を占める昼食の取り扱いにあるといえそうだ。

◎社員定数の観点

オールラウンド化と3階層運営による社員定数は、@事務系+フロント・ラウンジA客室(レストランを含む)Bその他(厨房+後方部門+設備など)の3ブロックに大別し、各ブロックの比率が「3:3:4」になるのが基本。同館の場合、この比率が大きく食い違っており、その主な要因が昼食の取り扱いにある。

◎GOPアップへ向けて

同館のケースでは、総論的に捉えればコストバランスの人件費関連総額6%超の解消が、前回の検証1に続きここでも優先課題となる。この6%は、人員に換算した場合18人に相当する。社員構成比の3ブロックのうち@の35人とAの29人の合計64人を46人に圧縮し、全社員で73人体勢(2割削減)への定数改善は、オールラウンド化で十分に対処できる範囲だ。ただし、前記の昼食取り扱いが全体の足を引っ張る感じになっており、それへの対処がもう1つの課題といえる。
  昼食対応による売上確保は、対外的露出の増加(告知面での知名度アップ)に伴う相乗効果も含めて検討を要する事項であり、前述の総論的な捉え方だけでは十分といえない。ただ、@の35人とAの29人は同規模の旅館としては突出しており、この部分を解消するだけで、GOPは大幅改善が可能だ。