「儲けるための旅館経営」 その48
定数2割圧縮でGOP6%増

Press release
  2010.8.21/観光経済新聞

社員定数が今後の経営では重要な意味をもってくる。前3回では、基本的な考え方に触れ、現状の経営数字を詳細に把握する必要があると述べた。今回から実際の経営データを基に、課題を考えていきたい。また、客室数や平均客単価(グレード)によって一概に判断できない面もあるが、ここではGOP確保に欠かせない「客単価とコストのバランス」の観点から各ケースを捉えるものとする。コストバランスについては、本稿の「3階層運営でコスト50%図る」(第44回)を参照されたい。

◆検証1
 ケーススタディ1回目の旅館は、客室規模50室、平均客単価1万5000円、年商4億8000万円でGOPが10%となっている。現在の社員数は52人(内訳は下表参照)を数える。

同館のコストバランス(売上に対する人件費、原材料、消耗品と備品補充の合計)は、平均客単価が1万5000円であることから、売上の50%が目安になる。50%の内訳は、人件費を28%とすると原材料と備品などが22%となる。これに対して現状は、社員52人と外注費を加えた人件費関連の総額が、およそ1億6000万円強で総売上の34%に達しており、コストバランスの面で6%の超過となっている。ちなみに外注は客室清掃とパブリック清掃で、年間で2500万円を計上している。

 ◎GOP10%の背景
 料飲サービス高(料飲率=料理提供にかかわる総掛かりコスト)を左右する食事提供の形態は、個人客の場合で夕食が部屋食、朝食が食事処、団体客の場合は夕食と朝食がともに宴会場となっている。個人・団体ともに料飲率の面で捉えると高い提供形態だが、マーケットの価格志向が高い中で平均客単価1万5000円をキープするには、こうした食事提供の形態がやむを得ないところ。
 
 また、平均客単価が比較的高い半面、GOPが10%にとどまっているのは、稼働率に問題があるためだ。

 ◎社員定数の観点
 オールラウンド化と3階層運営による社員定数は、@事務系+フロント・ラウンジA客室(レストランを含む)Bその他(厨房+後方部門+設備など)の3ブロックに大別して捉えるのが基本。また、各ブロックの比率は、@対A対Bが「3:3:4」となる。同館の場合、若干の凹凸はあるが概ねこの比率に収まる。

◎GOPアップへ向けて
 コストバランスの人件費関連総額6%超の解消が優先課題となる。この6%は、人員に換算した場合11人に相当する。3ブロックのうち@の16人とAの17人の合計33人を22人に圧縮し、全社員で41人体勢(2割削減)への定数改善は、オールラウンド化で十分に対処できる範囲で、3階層運営で平均客単価に見合ったサービスグレードが維持できる。 これによってGOPは6%増の16%が可能。さらに、稼働率改善のプラスα分を残している。