前回まで、GOPアップへ向けて、社員定数の観点からオールラウンド化や3階層運営について述べてきた。ここで、改めて社員定数の見直しが必要とされるポイントを整理しておこう。
まず、現状でみられる一般的な社員数を、運営部門からみた構成要素の面で捉えてみよう(下図参照)。運営に必要な全体の人数を@事務系+フロントA接客B厨房+後方運営(パートを含む)の3部門で大雑把なくくりをしてみると、@とAがほぼ同数で、両者の合計が全体の6割を占めている。計算の便宜上、総数を100人に仮定すれば、事務系にフロントを加えた人数が30人、接客係がそれと同程度の30人。ほかに厨房と後方運営が40人といった構成になっている。もちろん、客単価によって3部門の構成比に若干の違いもあるが、ここで着目すべき点は、客単価(グレード)、総売上(年商)、利益バランス(GOP)に照らしたとき、社員総数の100人が適正か否かということだ。
話を進める前に従前の状況を振り返っておこう。バブル崩壊後にみられた消費者の価格志向の強まりによって、低価格化への対応が迫られた。内部的な対応策として、いわゆるリストラ旋風が吹き荒れた。結果は、人員を削減したことでサービスグレードが低下し、従来の客単価を維持できなくなって、さらに価格を下げる悪循環のスパイラルに落ち込む痛い経験をしてきた。このリストラの時点で、GOPに対する認識がどこまであったかが問われる。「売上が減ったから人員を削減する」との単純な発想で、「とりあえず削減分で利益を確保しよう」とした構図を、全面的に否定できる経営者は少ない。それが悪循環スパイラルを引き起こし、そこで生まれた状況がいまだに続いている。さらに、現状の経営環境を「常態」と捉えるモノ分かりのいい経営者もいるが、将来への展望を見据えているかは疑問だ。
リストラとは、経営の仕組みを再構築する意味であり、人員削減は再構築へ向けた選択肢の1つであるが、あくまでも手段であって目的ではない。言わずもがなの話をもち出したのは、冒頭の「100人が適正な社員数か否か」を考えるときに、過去の悪循環スパイラルとは、まったく異なる視点から発想を踏み出す必要があるためだ。
例えば、100人を80人に減らすことを考えてほしい。社員数の面だけの結果をみれば「20人の減員」なのだが、それが従前のように目的なのか、それとも仕組みを変えるプロセスの中で必然的に出た結果なのかによって、意味あいは大きく変わってくる。前者のリストラ発想では悪循環スパイラルに陥ってしまい、GOPの改善も瞬間風速のようなものであるだけでなく、客単価に対するグレードが維持できずに、さらなる減員に迫られる。根本的なGOPの改善には貢献しない。
これに対して本シリーズでは、運営の仕組みを変えることで、20人を減員する必然性が見えてくる。減員してもサービスグレード(客単価)が維持できるために、減員しなければ20人が余剰となってくる。したがって、あるべき姿として減員が行われる。GOPの改善も恒常的に進行するわけだ。
ただし、冒頭の事務系+フロントと接客が当面の対象であって、厨房や後方運営については別のプロセスによる対応が必要となる。まず、第1ステップとして自館の現状を精査してほしい。
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