前回、「社員定数」を基軸とした運営手法の新たな概念の必要性を提起した。それを具体的な運営レベルに落とし込むと、運営を「3階層」で考えることが、現状に対して最も合理性がある。というのも、これまで「社員定数」として指摘してきたように、繁忙期に照準をあてれば閑散期には余剰人員を抱えることになるし、閑散期をベースにすれば繁忙期には対応できなくなる。さらに、そうしたシーズンによる繁閑の波動だけでなく、最近では曜日による波動に目を向けなければ対応できなくなっている。
例えば、100室の旅館で満館収容を350人程度(実勢)と想定してみよう。この想定条件でオン日とオフ日を前提にした場合、客数を100人刻みで3階層の運営を考えないと、現在の曜日波動には対応できない。
このモデル(表―1「3階層運営モデル」)では、階層1の客数100人前後の場合、接客係のほかにフロントや売店要員をオールラウンド化した接客要員10人体勢(各部署の必要最低限の要員を残す)。次に階層2の客数200人前後では、館内運営のオールラウンドから8人を加えた18人体勢。階層3の客数300人前後になった場合は、館内運営からさらに2人を追加し、そこに事務部門のオールラウンド5人を加えた25人体勢にする――と言った可変性が「3階層運営」の基本形となる。
ここで、クローズアップされるのが、館内運営の位置付けだ。館内運営とは、いわゆるバックヤードの業務であり、これまではパートの業務分野と考えられてきた。新しい発想の下では、それを「パートから社員へ」と大転換する。
社員化をする最も大きな理由は、年間で100日前後のオン日だけ接客パートを雇うことが不可能に近いからだ。これは、派遣会社経由や自社募集などの形体にかかわらず言える。いわば、旅館にとって都合のいい雇用条件(雇用日)だけでは、パートを確保できないのが現実といえる。このため従来は、年間で100日だけ必要であっても、実際には200日程度の雇用をしてきたのが実情だった。
また、そうした雇用形態は、オン・オフの大きなシーズン波動が明確だったために、多少の人件費ロスが生じても、ある程度は吸収できる要素が残されていた。ところが、最近のシーズン波動は大きく変化してきた(前回図示した「シーズン波動から曜日波動への変化」を参照)。年間を通じてオン日とオフ日が細かな波動となってきた。細分化されたオン日に対応するには、200日どころか通年のパート雇用が必要になる。しかし、そのような雇用が非現実的な対応でしかないのは、改めて説明するまでもない。人件費ロスどころか、GOPそのものがパート人件費で消し飛んでしまう。さらに、社会情勢の変化にともなって、短時間だけのパート雇用そのものが集め難くなったこともある。
パートによる館内運営業務の時間帯は、概ね「9時〜15時」と言われてきた。これに対して社員化した館内運営のオールラウンド化では、上記時間帯の従来業務のほかに、@夕食のセッティング(15時〜)A夕食の接客(18時〜)B朝食対応(7時〜)の3業務を前提にしている(表―2「館内運営モデル」参照)。
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