前回は、オン日に30人の接客要員が必要なケースを想定して、単純にシミュレーションしてみた。この場合、タテ割り運営をオールラウンド化することで、30人必要だった接客要員が8人でも賄える計算になった。このシミュレーションの前提となった与件を、一般的な旅館の社員定数(現状)に照らしてみると、@接客要員=30人Aフロント・売店要員=8人B館内運営要員=10人C事務要員=10人D=厨房要員=10人となり、現状の社員定数は68人だった。これは、旅館の規模でみると、客室数が100室前後で、夕食の提供形態がバイキングと部屋出しなどが混在し、平均単価で1万円から1万5000円程度の旅館に匹敵する。すべての夕食がバイキング形式で単価1万円以下ならは、150室以上にも対応可能な条件設定だといってもいいだろう。
そして現状の社員定数68人は、オールラウンド化によって22人減の46人でも、これまでと同等のサービスを提供できることが理論的に可能であることを示した。
さて、実際の旅館では、夕食形体が宴会食や部屋出し、レストラン食など多様であることから、それを形態別に解析したのが第36回の稿だった(別表右上=一部のみ再掲)。この中で「ケース1」として示した部分は、料飲サービス率(料飲率=料理提供にかかわる総掛かりコスト)の概念に乏しい数値、いわば旧来の発想に基づいた必要接客要員数と近似している。必要接客要員の合計をみると、最も多い日が69人で、最も少ない日は18人で足りる。オン日とオフ日の差は51人に達している。
そこで、オン日が30人だった前回のシミュレーションに合わせて、オン日の69人をベースにフロント他の各要員数を比例させた(別表右下)。そこから「現状」として算出できる社員定数は、総計で156人を数える。この社員定数は、300室規模で平均単価が2万円超のグレードに匹敵するが、ケーススタディの対象とした旅館の平均単価は1万円から1万5000円が主流だった。
現状の156人体勢を、前回と同様にオールラウンド化でシミュレーションしてみると、ステップ1で13人減となり、さらに進化させてステップ3になると58人減となる。最初の156人を98人まで減らすことが可能だ。
さらに、36回の稿ではケース1からケース5まで段階的に必要接客要員数の減少を想定した。そこでは、主に接客要員1人が何人の客対応をしているかにポイントを置いたが、下表のオールラウンド化要素を加味することで、現状のクオリティを維持しながら、社員定数はさらに減少させることが可能だ。
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