前回は、年間100日のオン日と、客室稼働が50%を割り込むようなオフ日への対応策を、抜本的に見直す必要性がある点を指摘した。かつて、シーズン波動として表れていたオン・オフ期の違いだけでなく、最近では高速道路のETC割引(今後の推移は予断を許さないが)による週末集中化が顕著になっている。この現象は、平日に動きやすい客層とみられていたマイカー利用の中高年層にまで広がっている。
オン日とオフ日に必要な接客要員数の違いは、観光シーズンと呼ばれる多客期でさえ、月間ベースで捉えると10人以下で対応できる日と、30人でも手が足りない日もあることが顕著になっている(宿泊の実勢定員が700人規模の旅館をシミュレーションした稿=第30〜32回参照)。
そこで、「必要接待人員」の見定めが不可欠となってくる。その目安として「満館時の人員構成」(表右上=再掲)の考え方が必要になる。ただし、前回も記したように、オン日の必要人数を確保するだけの発想では、人件費が膨らむだけで経営的に成り立たない。これは、改めて説明するまでもないことだ。
そこで、必要接待人員を算出する背景として、いわゆる接待係だけでなく、事務部門やフロント部門なども含む社員のオールラウンド化を前提とした「社員定数」の発想を提唱してきた。結論から言えば、各部門で総勢80人程度の社員規模の旅館の場合、オールラウンド化することで半数の社員規模にすることも、決してムリな話ではない。
例えば、右の「人形」で示した図(収容700人規模を想定)は、その日の宿泊客数に合わせて、オールラウンド化した要員のうち、どの部門から接客にどれだけ回すかをイメージしたものだ。1つの分岐点として、年間100日程度のオン日とそうではない日を設定している。満館の650〜700人の日は、予約や事務部門のスーパーバイザー(その部門の監督者)を除く全員が、オールラウンドの接待要員として接客サービスに当たる。一方、350〜400人のオフ日は、接客部門の要員のほかに館内運営(清掃ほかの後方業務要員)の要員をオールラウンド化することで、必要接待要員は十分に賄える。
以上の点は、社員定数を考える上での基本概念であり、実際には収容規模や客単価グレードを基に、全館のシフト運営の構築、年間を通じた変形労働時間に基づく労働基準法の順守、パート要員の適正化(社員化を含む)ほか、クリアしなければならない課題が多数ある。
しかし、需要の減少や二極化(特に低価格化)などの状況に対処して生き残るためには、こうした大胆な発想の転換と運営手法の切り替えは、避けられない状況にあると認識すべきだろう。
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