「求める理想は実現する」 その113
GOPのカギを握る館内品揃え

Press release
  200810.04/観光経済新聞

 前回は、バイキング料理でGOPを確保し、基礎体力を高めることで食事処や部屋食と言った食事サービスの「ピラミッド構造」が再構築される点を指摘した。
 このピラミッド構造は、今後の旅館経営で極めて大きなファクターといえるようだ。筆者は、これを食事提供での「品揃え」と捉えている。ここでいう品揃えには、2つの側面がある。1つは、この食事提供での品揃えであり、もう1つは客室タイプでの品揃えだ。

まず、第1点の食事提供から考えてみよう。端的にいえば、高級な料亭風の食事処、カジュアルな食事処やレストラン、そしてバイキング会場などに大別できる。視点を変えると、価格セグメント別の多様なニーズに対応して食事提供の場所を設定するということだ。
 誤解しないでほしいのは、かつて旅行業者から「大宴会場が必要」「これからは食事処が欠かせない」など、マーケットの「ニーズ」と言った発想ではない。GOPの確保が前提になっている。
 例えば、計算をしやすくするために平均単価を1万円とすれば、料飲比率(料理原価=@料費A厨房人件費B食器洗浄C料理輸送D接客人件費――などの諸コストを包含したもの)は50%で5000円となる。したがって、平均単価から料理原価を差し引く「10000−5000=5000」という単純な数式がイメージできる。この数式の「=5000」とは、不動産部門として5000円が確保されているという意味だ。これによってGOP確保のバランスが成り立ってくる。ところが現実は、この料理原価が60%(6000円)程度になっており、不動産部門が1000円マイナスの4000円に目減りしている。GOPを確保できない大きな要因が、このあたりに潜んでいるわけだ。
 この条件の下で平均単価を下回る8000円を受け入れた場合に、いったいどうなるかが問題となる。
 そこには、2つのマイナス要因が考えられる。1つは、諸コストを合計した料理原価が50%に抑えられたとしても、8000円の50%は4000円(不動産部門も4000円)となり、同じ不動産を売っているにもかかわらず、本来の5000円に対して1000円のマイナスになってしまう。もう1つは、さらに厳しいケースだ。前段で示した平均単価でのオペレーション(60%=6000円)が、そのまま8000円にもあてはめられている場合がある。こうなると「8000−6000=2000」という恐ろしい結果になってしまう。これではGOPなど成り立たない。ところが現実には、この恐ろしい構図がまかり通っている。理由は、食事処の品揃えと小回りの利くオペレーションの不在にある。
 そこで、冒頭に挙げた食事処の品揃えが必要とされる。多様なニーズの価格セグメントにおいてバイキング形式の食事提供は、8000〜9000円台の客層(コマ客)の吸収策と位置づけることができよう。
 つまり、平均単価ならば食事処や部屋出し、それを上回る単価では高級な料亭風の食事処と言った具合の品揃えと、それに見合ったオペレーションを確立することで、幅広いニーズに対応しながらGOPを適正に確保していくことが、今後の課題として最も重視しなければならない。

(つづく)

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