これまで2回にわたって従業員の「定数化」について述べてきた。いまや旅館にとって当面の至上命題は、いかにしてGOPを5%アップさせるかにあるのだが、そこでの大きな関門が、シーズンだけでなく曜日によっても客数が大きく左右されることだ。最近のテレビで流された報道番組でも、旅館の経営状況について、年間の100日は黒字だが、残る265日は赤字だと言及していた。
例えば、前2回でケーススタディとして取り上げた大型旅館(定員規模は約800人弱)でも、年間の宿泊者総数は約14万人であり、稼働率が70%前後の日数は年間で96日しかない(上表・再掲)。こうした現状の下では、「GOP5%アップなど考えられない」と言う経営者が多いのも頷ける。
しかし、手をこまねいていても新たな道は開けない。そこで筆者は、料理提供にかかわる総掛りコストとして料飲サービス料率(料飲率=材料費、厨房や接客コストなど)の引き下げが不可欠な点を指摘し続けている。従業員の定数化もそうした対応策の延長線上にある。
改めて前回までの例示旅館の実態を振り返ってみると、「月別客数」(右・再掲)に対する従業員定数は、必ずしも客数と連動していないことが見てとれる。その大きな要因が夕食の提供形態にある。言い換えれば、料飲サービス料率を度外視した形態がまかり通っている状況にある。今回はそうした実体を、繁忙期を例に考えてみたい。
まず、「月別客数」の表を見ると、この旅館では7月と8月がともに1万4000人台を達成している。表中の定数とは、接客にかかわる月間の延べ人数であり、客数がほぼ同数であるにもかかわらず、約100人の違いが読み取れる。実は、この月差こそが夕食提供の形態によるものにほかならない。
月間の曜日ごとの違いも影響しているが、ここでは夕食の提供形態による違いを大掴みにしてみよう。それを示したものが「夕食形体と接客要員数の関係」(下図)だ。とりわけ目をひくのが「宴会客数」の項目であり、宴会食が料飲率に大きく影響していることが一目瞭然といえる。これに対して部屋食やレストランでの比率は、1日当たりの人数の多寡にあまり左右されていない。
したがって、同館や類似の大型旅館では、宴会食に対する新たな施策が求められよう。これについては、料飲率を低下させる方策として、客室係のほかに、フロント係や事務職員をも加えて接客にあたる「オールラウンド化」や、新宴会方式としての「板前によるおもてなし料理」などを提案してきたわけだ。
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