前回、客数と定数の非整合が意味することは、「人の動きを徹底して見直し、シフト運営をはじめシステマチックな仕組みづくり」の必要性を示唆していると述べた。実は、旅館の至上命題であるGOPを5%アップのためには、この非整合を合理的に克服することが、極めて重要な課題だと筆者は考えている。
そこで前回例示したある大型旅館の年間客数の動態調査結果をさらに検証してみよう。重複するが、定員規模は約800人弱で、年間の宿泊者総数は約14万人。主要マーケットからの時間距離や繁閑期の差が大きいなどの立地条件から、定員規模に対して総数はやや少なめだが、GOPは確実に15%超を弾き出している。そうした諸条件を念頭に読み進めていただきたい。
まず、年間多客日の実体(右表・上段小表)をみると、1日の客数が500人を超える日が年間96日を数える。この500人を超える日を月別にみると、多い順から7月14日、10月13日、8月12日、6月11日、3月10日、11月7日、2月6日、1・9・12月5日、4・5月4日といった配分になっている。これ自体は、地域のオン・オフ期の捉え方とも言えるが、課題は前回も指摘した夕食の提供形体にある。同館の場合、食事提供の形体は団体の宴会食、コマ客の部屋食、レストランが混在していることだ。
200人以上の宴会食が年間51日、部屋食対応で80人以上の日が78日、同じくレストラン対応で300人以上の日が101日となっている。しかも同じ日に3つの対応形体の重なる日も少なくない。そうした日の接客では、極めて高度なオペレーションを確立しておかない限り、場当たり的な人海戦術に頼らざるを得なくなる。そうした状況では、料飲サービス料率(料飲率=材料費、厨房や接客コストなど)の引き下げはおぼつかないし、ましてGOP5%アップの実現などあり得ない。言い換えれば、人海戦術的な現実を目の当たりにしているが故に、GOPアップを放棄し、こうした理論に対して拒絶反応を示す経営者が少なくない感じが否めない。(筆者の思いすごしであればいいのだが…)
さて、客数が一定数以上の稼働日の定数シミュレーションを行ってみよう(下表=下段)。前述のとおり定員規模は800人弱だが、客数が100人台の日もあることから、300人以上を4パターンに分け、料理提供の形体別に対応客数と接客要員数の関係を捉えてみた。
ここで注目すべきは、同じ旅館でも、接客要員は最小15人から最大50人の大きな開きがあることだ。そこで、全体を見定めた上で、他部門の要員を含めて定数化するオールラウンド態勢が必要になる。
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