前回に続いて「調理人おもてなし宴会」のポイントを述べてみよう(前回から使用している「調理人おもてなし宴会」の名称は、宴会場で調理人が実演する「座店料理」を改称したもの)。要点は、新しい試みとして4点があげられる。第1点は、宴会運営の時間を3分割(@あいさつ・乾杯A宴会・中出し料理B止め椀・締め)して、第2フェーズの「中出し料理」の場に、名称のとおり調理人が宴会場に登場すること。第2は、それによって接客係がその間は最小限の人数で済むこと。第3点として、フロントやパブリック部門など、宴会時間には手の空くスタッフをオールラウンド化して接客に当たること。第4は、複数の宴会が重なった場合のスタート時間にライムラグをもたせること(30分程度)だ。これらの4点は、いずれも相関関係にあり、最終的には接客コストの低減につながる。
接客コストついては、料飲サービス料(料飲高)の内訳として@原材料費A人件費(調理、料理輸送、接客、下膳、洗浄など)B消耗品類に大別し、その中で接客を捉えることが最優先であることを、度々指摘してきた。例えば、宴会における接客係1人のコストが1万円だったとすれば、20人を接客した場合の客1人当たり単価は500円だが、10人だと1000円に跳ね上がってしまう(詳細は本稿第12回参照)。この点だけを捉えても、接客コストの低減がいかに重要か理解できるはずだ。
さて、新方式の第1点「調理人おもてなし」は、宴会場で調理人が自ら客の前に出て、料理を盛り付けるのがミソ。客にとって1番の感動は「あなたのために」という言動を目の当たりにするときだ。どんなに素晴らしい盛付であっても、厨房で量産されたものが単純に置かれるだけとは格段の違いがある。見方によっては単なるパフォーマンスだが、感動とはそうした要素に大きく左右されるのも、さまざまなイベントが人を惹きつけることで証明されている。
しかも。この間は接客係が他の会場の接客にあたることができる。それが第2の要点だ。アイドルタイムの要素は完全に払しょくできる。
第3の要点であるオールラウンド化によって、宴会中でお客の訪れる機会が激変した他部門を接客要員化することだ(詳細は第17回参照)。そして第4のスタート時間のタイムラグは、調理人による第2フェーズの作業を円滑にする意味がある。
さて、こうした新方式の「調理人おもてなし宴会」では、茶碗蒸しや止め椀は後に供されるが、調理人盛り込み用の皿は最初からセッティングされている。そこには下段のようなフリップを置いておき、「何が出るのか」の演出効果を持たせているわけだ。これらのコストパフーマンスなどは順次紹介する。
後ほど調理人が盛付に参ります。
お楽しみの程、お待ち願います。
※写真右上の空皿には、上記のような内容のフリップを置き、期待感を煽るのも演出効果を狙った手法
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