「儲けるための旅館経営」 その186
旅館ユニシスで改正耐震改修法に対処

Press release
  2013.9.21観光経済新聞

8月中旬ごろ気になったニュースを紹介する。「温泉街に耐震化の波 消える?老舗旅館 資金難で対応難しく」あるいは「旅館・ホテル耐震強化 税優遇で投資促進」などの見出しが、一般紙で大きく報じられた。もとより、今春5月22日に成立した改正耐震改修促進法にかかわる話題だ。

2つの見出しの中で前者は、「資金を準備できず改修の予定を立てられない」など温泉地の実例を踏まえながら、「改正法成立に併せて整備された新しい補助制度を使うと、3389%の負担。だが、その割合は都道府県や市町村がどれだけ負担できるかで変わる」と、対処しようとしたときの現実を紹介している。一方、後者は「改正耐震改修促進法に基づいて、耐震設備の投資を行った旅館やホテルを減税対象とする案も出ている」と、政府与党の税制調査会の動きを報じたものだ。

これら資金難の厳しい現実と税制措置の背後に流れるものは、どちらも「耐震改修を行うこと」が大前提となっている。言葉は悪いが、どんなに泣きを入れても、この大前提を覆すことはできないし、大前提を遂行しなければ減税の恩恵にも与かれないということだ。

そして、改正耐震改修促進法への対応は、「旅館の死活問題にもつながる」と多くの旅館経営者が認識している。だが、経営者のそうした認識での軸足は、どこまでいっても自社の「経営」にとどまったものだ。端的にいえば、客足も消費単価も共に伸び悩み、ややもすればマイナスの状況下で、法の定めた改修を行う資金的な余裕などないとの論だ。しかし、そこに社会を納得させる説得力は、皆無に等しい。

社会(マーケット)、改正耐震改修促進法、旅館の3者について、それぞれの位置関係をみれば自明の理だ。極めてストレートに捉えれば、@社会は改正法を必要としているA改正法は旅館に改修を求めるB旅館は改修する――の三段論法だ。そして、三段目の改修を旅館(自社)の都合で不可能とすれば、社会は改修できない旅館を必要としない。つまり、旅館が軸足を自社の経営でなく、経営を成り立たせている社会に置き直してみることによって、降って湧いたような外因にすり替える「死活問題視」は、本来できないはずだ。

くどい話で恐縮だが、地震国日本を想定した改正耐震改修促進法への対応は、定められた法律へのコンプライアンスであるとともに、コーポレートガバナンスとして企業経営における社会的責務の遂行にもほかならない。対応できなければ、生き残りもできないとの覚悟が必要だ。

もちろん、前述したように価格志向やレジャー活動の分散多様化で、旅館の経営環境は極めて厳しい。しかし、観光立国が緒に就き、アベノミクスで景気の明るさも見え始めている。成長分野であることも間違いない。したがって、適正な経営ビジョンを展開して未来図を描けば、改修へ向けた資金調達は十分にできる産業でもある。それが、現在の旅館業だと前向きに捉えたい。

現実的な対応として耐震改修の資金融資を前提にしたとき、融資先が納得できる中長期の経営計画が必要だ。再三にわたり指摘してきたことだが、計画には健全経営を数値的に示す根拠がなければ、単なる絵に描いた餅でしかない。それを可能とする会計ツールは、いま提唱を続けている旅館ユニフォームシステム(旅館ユニシス)に尽きる。

なぜなら、財務会計と運営会計の機能を果たす旅館ユニシスは、日々の運営実態を的確に把握し、当面の経営に反映させること、それを指標に将来の生き残り戦略につなげること。この両者を並立させる会計システムだからだ。そして、GOP15%以上を確保する健全経営とは、日々と未来の両者が噛み合って持続性を発揮する。

これは、耐震改修資金の融資先に対して、極めて有効なエビデンス(証拠・論拠)となる。いわば、生き残るためには自助しかなく、それを覚悟したとき旅館ユニシスが切り札となる。  (つづく)