「儲けるための旅館経営」 その184
旅館ユニシスは経営の不可欠ツール

Press release
  2013.9.7観光経済新聞

旅館ユニシス(ユニフォームシステム)は、日々の運営実態を数値データとして捉える経営ツールだ。なぜ、旅館ユニシスが必要なのか。答えは、2つの要素を満たす会計システムだからだ。それが、従来の財務会計とは異なる運営会計の姿でもある。2つの要素の第1は、日々の運営実態を的確に把握し、当面の経営に反映させること。第2は、それを指標にして将来の生き残り戦略につなげること。だが、この2要素を並立させることは、意外に難しい。

現状を越えなければ未来へはつながらない一方、未来にばかり目を向けていると現状がおろそかになる。その結果、往々にして「今日を生きなければ明日はない」の論を、極めて現実的で適正と考えてしまう。しかし、「明日が生きられるかどうか分からないなら、今日に何の意味があるのか」との視点もある。

例えば、今年5月の改正耐震改修促進法への対処に、2つの要素が並立してこなかった一端が見てとれる(第172174回参照)。耐震改修促進法は、阪神淡路大震災を教訓に、18年前の95年に制定されている。18年前と言えば、バブル経済が崩壊して間もないころだ。価格破壊の嵐が吹き始めた現状を、いかに乗り切るかが大半の旅館にとって最優先課題だった。どれだけの旅館が自社の未来の姿を描いていたかは不明だが、耐震改修促進法の背後にある現実(不謹慎な例えだが東日本大震災のような被害)への対処を想定し、生き残り戦略への組み込みをしていなかったことから、法改正を「死活問題」と捉えざるを得なかった。

つまり、当面の価格破壊への対処と、将来の経営計画という2つの要素は、多くの場合に別々の思考チャネルで考えられるケースが多い。だが、どちら側の要素で考えるにしても、運営実態を客観的に捉えたデータが基本であることは共通する。つまり、日々の運営データを一定のフォームで記録することがディテールの把握であり、2つの要素に対応する上で欠かせない(下図参照)。

このことは、視点を逆にすると理解し易い。将来の経営に向けた経営計画の策定から現在へと話を進めてみよう。結論から先に言えば、将来の経営には、運営実態のディテールに基づく客観的な法則性や整合性の認知が求められる。それは、社内的な意味づけだけでなく、金融機関など第三者へ向けたエビデンス(証拠・論拠)でもある。それらを行えるのは、現在提案している旅館ユニフォームシステムにほかならない。

例えば、将来の運営でGOP10%アップを目指すシミュレーションとして、現状に対し人件費10%の削減を仮定してみる。その人件費10%の中でアイドルタイムや重複作業などが6%あったとすれば、実質的な削減効果は4%にしかならない。言い換えれば、日々の運営実態を数値データとして適正に運営管理をして、実態に即したシフト運用などに運営変更をするだけで、実は6%の削減効果が得られると言う意味だ。

これまでの内部的データ――いわゆる一般的な財務会計などのデータは、運営実態のディテールと乖離しているために、上記のような実態と整合しない人件費10%削減などの計画が出されてしまう。そこに、運営状況の実態を示す日々のデータを把握する必要性が出てくるわけだ。

さらに、業界全体が同じフォーム(あるいは科目)を使用し、業界スタンダードとしてデータの共有化が図られれば、自社の運営実態を業界基準に照らして把握することにもつながる。なお、筆者の本コラムは、都合により9月末をもって終了する。残り4回だが旅館ユニシスの有用性を総括し、読者の皆さまに普及と活用を託したいと思う。 (つづく)