「儲けるための旅館経営」 その178
料理レシピ発想でGOP貢献も

Press release
  2013.7.20観光経済新聞

前回は「GOP15%以上目指し細部検証」をテーマに述べてきた。旅館ユニシス(旅館ユニフォームシステム)によって運営のディテールを把握することは、経営改善へ向けた第一歩にほかならない。それに伴ってシフト運営の見直しをはじめ、関連する運営手法を再構築することが必須だ。

そのためには、これまで述べてきた料理運営コスト(料理運営にかかわる全てのコスト)に着目しなければならない。従来の財務会計で「一般販売管理費」と大括りされていた人件費やその他経費は、旅館ユニシスでは「料理運営原価(料理運営コスト)」と「一般販売管理費」に区分けできる(下図再掲)。これによって、要員の配置と活用の仕方に対する矛盾、あるいは運営の細部に潜む不合理な事実などが、計数的に明らかになる。

言い換えれば、シフトやマルチタスクによる要員運用の仕組み、アイドルタイムや重複配置などさまざまな是正点が浮かんでくるはずだ。課題が見いだせれば対処策を講じることもできる。旅館ユニシスは、それ自体がGOPを生みだす「魔法の小槌」ではない。いささか低次元な話で恐縮だが、イギリスの寓話「ジャックと豆の木」の豆のように、蒔けば大きな木になるし、木を登れば大きな宝を得ることもできる。旅館ユニシスを根付かせることで木は育つが、木を眺めていても始まらない。育った木を登ることが、是正策の実体化でもある。それがディテールを把握し、運用の仕組みを再構築する意味だろう。

さて、課題という意味の1例として料理運営コストのカナメでもある厨房に視点を移してみよう。最も基本的な考え方は「厨房運営は食材の原価管理から実際の作業である仕込みや盛付など、さまざまな要素を同時に考えながらの見直しが必要となる。したがって、一般的な作業の合理化といった観点だけでなく、相互の連携など全体を俯瞰する視点が欠かせない。加えて、スムースな運用には電算化をはじめとした新たな取組みも欠かせない」(拙著「赤字が消える?旅館が変わる!」観光経済新聞社刊から)と認識している。

こうした取り組みのスタートとして、厨房作業での「レシピ化」の必要性を提唱してきた。作業のローコスト化では①食材別集中仕込み②原材料管理の電算化③盛付の集中化④調理運用ハンドブック⑤運用体制の見直し――が不可欠だからだ。

料理とは、食材と人間の技が集合したものだ。その手順を元にさかのぼれば、当然ながらレシピに行き着く。食材をムダにしていないか、誰でもできる作業を高人件費の板前にさせていないか、出来上がった料理を運ぶ手順での不合理はないか、せっかくつくった料理が接客時の接遇方法で感動を損なっていなか……など問題点を探って是正する。

個々の是正策は、GOPに対してわずかな貢献度かもしれないが、それを積み重ねて15%以上にする可能性は、極めて大きいと理解してほしい。旅館ユニシスの発想は、運営の全体を俯瞰するものであり、小手先の取り組みではないのだ。(つづく)