「儲けるための旅館経営」 その177
GOP15%以上目指し細部検証

Press release
  2013.7.13観光経済新聞

改正耐震改修促進法との向き合い方としてコンプライアンスやコーポレートガバナンスを考えると、自助努力でそれらを実現していくしかない。そのために改修原資づくりに欠かせない長中期経営計画、あるいは事業計画などの策定が不可欠だと述べた。だが、エビデンスとなる自社の運営会計を精査していくと、第三者に示すには心もとない数字が実態として浮かび上がる。

これら辛辣な言い方をしてきたのには、本シリーズの「GOPを重視した経営のすすめ」が十分に理解されていなとの筆者の思いがあった。旅館の健全経営には、GOP15%以上を必要とするが、現実には多くの旅館が1ケタ台に甘んじている。それでも日本旅館の灯が輝き続けていられるのは、さすがに伝統と文化の成せる技としか言いようがない。

だが、今般のを法改正を「死活問題」と捉える業界人の意識は、詰まるとことGOP15%以上を確保する日々の経営努力が薄かったことを改めて露呈する結果となったようだ。なぜ、そうした経営を続けて来られたのかを問うのは詮無いことで、いま成すべきは本シリーズのテーマである「どこで儲けて、どこで損をしているのか」を真摯に問い直すことだろう。経営に潜むムリ・ムラ・ムダを削除できれば、GOP15%以上の達成は難しい目標でないのだ。

問題は、前段の「経営努力が薄かった」という姿勢以前に、現行の会計システムから運営のディテールを読み込むこと自体が至難だということ。そこで旅館ユニフォームシステムを提起している。旅館ユニシス(旅館ユニフォームシステムでは文字数が多いため簡略に縮めてみた)は、言葉の意味として「統一方式」となり、最終の目的はそこにある。自社の運営状況を他社と比較した場合にどうか、競合を避けて地域で棲み分けする方途はないのか……などへの発展形を秘めている。だが、当面は運営ディテールの把握機能の活用だけでも、意義は十分あるだろう。

 再三にわたり指摘していることだが、旅館は不動産業と料飲業を複合した営業形態で成り立っている。いわば、客室売上と料飲売上の2本立て収入のはずだが、販売時点では1泊2食の1本立てになっている。さらに言えば、2大収入といっても基幹である不動産業の客室収入は、1本立て売上から料理にかかわるコストを差し引いたものをでしかない現実がある(第159回「1泊2食で売り泊食分離で管理」参照)。この実態が「原材料と一般販売管理費」の従来型会計区分けを生みだした(下図再掲)。

 極めて素朴な設問だが、「○○業務に従事している社員Aさんの年間実働時間と会社への貢献度は」と聞かれたとき、とれだけの実態を把握しているのか疑わしい。経営者がそのような抹消把握まで必要ないかもしれない。だが、運営の現場でそうした問題意識がなければ、ムリ・ムラ・ムダの排除はできない。

 GOPを1%ずつ重ねて15%以上にするには、旅館ユニシスによるディテール把握が不可欠だ。(つづく)