把握旅館ユニフォームシステムは、総論として捉えれば運営の実態を把握するツールだ。そして、運営に潜むムリ・ムラ・ムダを洗い出し、適切な運営変更を施して健全経営に必要なGOP15%以上を確保するのが最終目的といえる。肝心なことは、洗い出しと運営変更の両輪を適切に組み合わせることにある。極論すれば、運営のディテールを洗い出しても、何も手を施さなければ意味がない。また、実態を把握せずに仕組みや設備のみを採用しても効果は得られない。
多少乱暴な例えだが、磁力線を使ったMRIや放射線のCTなどで体内の状況を把握し、それに応じた医療を施すことに似ている。医療でのMRIやCTに相当するものが旅館ユニフォームシステムであり、手術の道具や技術、使用する医薬品が旅館の仕組みや設備だと言える。そして、最終目的は、医療ならば人体の健全化であり、旅館では経営の健全化にほかならない。
医療を例えに出したのは、人体健全化の目的を達成するために病根を目定め、それを適切に治療する各段階が、一連の流れとして明確につながっているためだ。病根を見定めただけの終わりはないし、どんなに手術の技術が高くても、病根の部位を特定せず闇雲にメスを入れることはできない。出たとこ勝負ではリスクが高過ぎるし、現実にあり得ない。
これに対して旅館の健全化では「一連の流れ」として捉える発想が、十分と言えない傾向がある。言い換えれば、目的である「GOP確保」をはじめ、目的を達成するための手段である「実態の把握」「運営の変更」「設備の刷新」などが、それぞれ個別に切り離されて「一連の流れ」に収まっていない。言葉悪く言えば、枝葉を個々に論じているだけで幹に収斂していない。端的に言えば、成功事例などで外的に認知できる部分だけを切り取って、いわゆる「いいとこ取り」に済ますケースが多々見受けられる。それによって無残な結末を迎えたケースも少なくない。
旅館ユニフォームシステムは、冒頭で記したように運営実態を把握するツールだが、言葉を換えれば運営実態が見える会計システムでもある(第157・158回「現行会計で見えない運営実態」参照)。つまり、実態を「一連の流れ」として関連づける下地を形成するものだ。
旅館の基幹収入は客室と料飲の2大収入と付帯売上だ。しかし、客室収入は、マーケットが求める1泊2食の売り方が変えられない以上、総売上から料理運営コスト(料理提供にかかわる全コスト)を差し引いたものであるのが現状だ。一般的な財務会計で運営のディテール把握には限界がある(下図参照・再掲)。視点を換えれば、運営に潜むムリ・ムラ・ムダが見えてこない。その断片を各論で捉え論じることは、もう時代が許さない。生き残りを賭けた戦略決定が求められており、それを可能にするのが旅館ユニフォームシステムであり、それを踏まえた運営の再構築しかない。改めて焦眉の急であることを訴えたい。 (つづく)
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