旅館ユニフォームシステムは、これまで述べてきたように、運営のディテールを把握するツールであり、経営上の矛盾やジレンマを再認識するためのものではない。目指すところは、健全経営に必要なGOPを確保することにある。いわば、生き残るための運営管理ツールだ。
前回、実態数字を旅館ユニフォームシステムに落とし込んだケーススタディ(サンプル旅館=客室規模約50室、年商4億2000万円弱、平均客単価が1万3198円)のまとめとして、これからの運用には「工夫の余地が多分にある」と述べた。どの部分をどう工夫するかは、旅館の規模やグレード、経営理念などによって手法が異なる。だが、収入(売上)とコストのバランスが適正に図られていることは、どのようなケースにも共通する。100円のコスト(原価や加工賃、販売管理費など)がかかっている商品を100円で売る愚はない。百歩譲って、500円の商品を含むトータルで利益を出せれば、その論も成り立つ。前提は、トータルで利益の出る仕組みがあっての話だ。不本意ながら「この価格にした」と言う現実対応に、その仕組みは不在だ。
故に、そうした現実に打つ手がないと諦め、あるいはジレンマの中で悶々とする。しかし、諦めることも悩む必要もない。運営実態のディテールを的確に把握すれば、場当たりでない「工夫の余地」が見えてくる。
どこに、それがあるのか。まず、着目すべきは料理運営コストだ。外食産業のFCコスト(原材料+人件費)に当たる部分であり、これを販売単価から差し引くと、旅館の基幹収入の双壁である室料収入になる。この室料収入を上げきれていないケースが、現状では大半を占めている。
サンプル旅館の料理運営コストの実態を旅館ユニフォームシステムで精査し、コストバランスをシミュレーション(下表・再掲)した。これをビジュアル化(下図)すると、図中のグレー部分が「工夫の余地」に該当する部分であり、言い換えれば室料収入を損失させている部分だ。
工夫の余地は稿を改めて細述するが、料理運営コストとは料理運営にかかわる全てのコストであるとの定義を考えてほしい。「原材料+調理+料理輸送+接客+下膳……」の総和である以上、いずれかに工夫の余地がある。1例として、食事会場で板前が調理実演を行い、お客がそれを待ってテーブルに持ち帰るシステムならば、料理輸送と接客の一部はコストカットできる。
前述したグレード、経営理念とのマッチングを図れば工夫の手法はさまざまに考案できる。第一歩は、ディテールの数値把握にあるとの認識が必要だ。 (つづく)
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