今回は、旅館ユニフォームシステムの重要な解析項目である「料理運営原価(料理運営コスト)」を捉えてみよう(下表=再掲=左から3項目)。これまで述べてきたように料理運営原価は、料理提供にかかわる全コスト(原材料、調理や接客の人件費、下膳や食器洗浄、消耗品や備品補充など)を包含している。
表中の料理運営原価に注目してほしい。宿泊単価8000円では、5200円の料理運営原価をかけており、単価に対して65%の割合を占めている。平均宿泊単価では6995円で同比率が53%、最も高い4万円超では1万6000円で同比率は40%となっている。
こうした運営実態(コスト)に基づいて収入(売上)を逆引き計算すると、8000円の単価で上額のコストをかけると、室料収入としては2800円しか残らない。平均単価では6230円となり、最も高い価格帯の4万円超では2万4000円の室料が計上できる。収入の基幹である料飲収入と室料収入を対比させると、8000円では65対35、平均単価で53対47、4万円超が40対60となる。
結果として、単価8000円ではGOPが出ないどころか、2万円以上で得た室料収入の利益を、8000円での不足に補てんするしかない。ただし、その2万円以上での総売上に対する利益貢献度は20%程度であることを勘案すると、補てんできる限界は自ずとみえてくるはずだ。こうした実態で経営が成り立つ方が不思議と言わざるを得ない。
問題点の解析は次回以降のテーマとし、続いて夕食の料理運営原価をみよう。額面は宿泊単価8000円の場合に3657円、平均単価では5452円、4万円超で1万4457円の実態が示されている。この額面金額は、料理運営原価から朝食運営原価を差し引いたものだ。事例のサンプルとなった旅館では、朝食がバイキング形式であり、宿泊単価に関係なく運営コストは均一に算出できる。ここから算出した料理運営原価に対する夕食運営原価の比率は、単価8000円で70%、平均単価で78%、4万円超で90%になっている。
次に、夕食運営原価の構成(下表右側、材料費金額と人件費金額)を捉えてみよう。単価8000円の場合、料理の材料費は単価の11%に相当する880円、人件費は同比35%の2777円だった。以下同様に平均泊単価では、材料費が15%の1980円、人件費が26%の3472円。4万円超では、材料費が17%の6800円、人件費が19%の7657円となっている。
以上の各数値は、現状の運営実態を旅館ユニフォームシステムのそれぞれの項目に落とし込んだときに、ディテールの一端として浮かび上がってきたものにほかならない。こうした現状把握の下で、GOP確保の「5つの鉄則」(@現状GOPと人件費の検証A人件費の改善B室料収入の増加C減収増益の検討D原材料費vs人件費率の検討=第162回)を踏まえた対応策を講じることになる。 つまり、GOP確保は鉄則@Aが大前提であり、旅館ユニフォームシステムが不可欠だ。(つづく)
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