前回は、単価別の客数分布を把握した。これは前稿で記したように、旅館ユニフォームシステムにとって経過点の一つに過ぎない。本旨はGOPの確保であり、そのために料理運営コストの運営実態を把握し、そこから旅館ごとの最善策を求めることにある。
だが、客数分布の実態は、経営戦略上で避けて通れないものであり、今回はこの点に若干触れておく。これまでに筆者は、お客を差別してはならないが、数値化できる属性の範疇で捉える必要もあるとのロジックを展開した(第162回)。このロジックを矛盾とみるか、現実に即した対応とみるかで見解の違いが出る。だが、肝心なことはそこに経営の根幹にかかわる課題がある。詳しくは拙著『財務解析・売り方で旅館は変わる』(観光経済新聞社刊)の第1部「いいお客様を求めると黒字は出ない?」を参照いただきたい。
要約すると、実勢比率90%の客層にとっては、客数で10%ほどの高額客が満足できる施設展開(パブリックなど)によって、料金を上回る満足度が得られる。そこに旅館にとって「貢ぎの構造」が生じていることは、改めて説明するまでもないだろう。サンプル旅館(下表)の場合、8000円から1万8000円の客単価であっても、4万円超のパブリックが享受できる。
旅館ユニフォームシステムは、前回のヒストグラムのように、こうした構造を冷徹に示す。日本旅館の伝統や文化、あるいはそれらを拠り所にした経営面での矜持さえ、ときに否定する場合もある。自社ドメイン(領域)の明確化が経営戦略の根幹であり、経営リソースをそこに集中させることが欠かせないからだ。言い換えれば、現状のリソース展開は、散漫になっていると推測できる。
サンプル旅館の場合、ドメインを見直し、売上貢献度が合算しても10%程度に満たない3万円以上を切り捨てる手もある。だが、現状で76%を占める8千円から1万4000円の価格帯は、それら10%の高額帯の「貢ぎの構造」で支えられている。そこにジレンマが生じる。
本題に進もう。旅館ユニフォームシステムは、収入(売上)とコストの関係を明確化し、適正なGOPを確保するのが狙いだ。この場合、収入は料飲売上と客室売上、付帯売上に3分類できるが、基幹である料飲売上と客室売上は、いわばボーダレスで区分が難しい。そのために従来の財務会計では、原材料と一般販売管理費、GOPの大雑把な区分けで済ましていた(第158回「1泊2食で売り泊食分離で管理」参照)。
これに対して旅館ユニフォームシステムは、この大雑把さを真っ向から否定する。もっとも、それで管理会計が複雑になっても意味がない。例えば、料理の原材料については、これまでの財務会計でも実態の計数が概ね把握されていた。決して複雑な話でない。コンピュータがデータコンバートで、計算式通りに計算してくれる。それが旅館ユニフォームシステムなのだ。(つづく)
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