「儲けるための旅館経営」 その166
運営実態の数字が示すものは@

Press release
  2013.4.20観光経済新聞

前回は、数字が客観的な事実を伝える一方で、アベレージ(平均)では運営実態のディテールが見えない点を指摘した。ディテールにこだわる理由は、経営のスリム化へ向けてムダをはぶく可能な限りの努力を重ねても、厳しい経営状況が改善に至らない現実があるからだ。旅館ユニフォームシステムを駆使して、運営のディテールに潜む問題点を洗い出し、問題にふさわしい改善策を根本から講じなければ、これからの生き残りは難しい。

今回からは、単価別にディテールを検証してみよう。サンプルは、これまで例示してきた客室規模が約50室、年商(総売上)4億2000万円弱の旅館だ。平均客単価が1万3198円だが、4万円を超す単価のお客もいる(下表)。こうした価格帯の広さは多くの旅館に共通する。

まず、下表の左側2項目(宿泊単価、客数)に注目してほしい。運営実態を把握するもっとも基本的な部分であり、そこから実態の多様な面が読み取れる。データを解析する上では、いわゆる度数分布表に該当する部分だが、このままでは数字の羅列でイメージを描き難い。ヒストグラム(右上図)にすると、第1に価格帯別の客数分布が一目瞭然でみえてくる。これを基に売上と客数の関係を捉えてみよう。

客数の面から全体を俯瞰してみると、8千円の価格帯から平均単価に近い1万4000円の価格帯で約76%、1万8000円まで広げると89%がこの範囲に収まっている。一方、4万円を超す高額客も年間に158人いるが、総客数に照らすと0.5%程度にとどまっている。

そこで、価格帯別に総売上への貢献度を試算してみよう。ボリュームが1番大きな1万円台(1万円以上、1万2000円未満)は、客数8381人で総客数の約27%を占める。この価格帯での売上を単純計算すると、約8900万円で総売上に対して20%程度の貢献度だ。前述の8千円〜1万4000円を同じ方式で算定すると、客数ベースで全体の76%を占めるが、総売上への貢献度は約61%。同様に8千円〜1万8000円に拡大すると、客数で約89%に達するが、貢献度は約78%にとどまる。これに対して2万円以上(2万円〜4万円超)は、客数だと10%をわずかに超える程度だが、売上への貢献度は22%になる。

旅館ユニフォームシステムの狙いは、こうした価格帯分布の把握ではない。背後に潜む実態を捉え、GOPを弾き出すことにあると、念のため書き加えておきたい。(つづく)