「儲けるための旅館経営」 その165
アベレージでは見えない運営実態

Press release
  2013.4.13観光経済新聞

数字は客観的な事実を伝える。それは紛れもない事実だが、前回指摘したように、アベレージ(平均)では運営実態のディテールが見えない。総売上を宿泊人数で割れば平均消費単価が出るものの、その数字にどれほど価値があるのかには疑念が残る。

これまで示してきたように客室規模が約50室で、年商(総売上)5億円弱の日本旅館のケースでは、平均客単価が1万3198円だった。ここで見える姿は、同業者ならば「ああ、それくらいの旅館か」と一応の目安はつけられる。だが、一般の利用者には分からない。理由はいくつもあるが、利用者が旅館をイメージする場合、概ね一般に公開されている訴求情報、平たく言えばパンフレットやホームページ、あるいはネット上の価格比較サイトに類するものがベースになっている。

そうした公開情報に対して、「パンフレットに載っている部屋と料理」と実際に宿泊したときのギャップを、多くの消費者は実感している。これに対して旅館は、そのギャップを小さくしてクレームが出ないように努力している。この時にアベレージが作用しているのは、紛れもない事実だ。つまり、平均を基点に「ちょっと上のハードやソフトの提供」という形になる。しかし、「ちょっと上」とは提供する側の思いであり、お客の側に伝わっていない。理由は、平均単価など知る由もなく、上か下かの判断などできない。

もう少し付け加えると、お客は公開されている施設や料理の情報、表示されている売価を天秤にかけ、そこから値打ち感を弾き出している。あるいは、他社との比較を行っている。これに対して旅館側は、「ちょっと上」の提供のために本来は残るべき利益(GOP)を無為にしている。思いが伝わっていない以上、それは無為と言わざるを得ない。

つまり、そこにも「アベレージとは何ぞや」の疑問符がついて回る。極論を言えば、「アベレージにとらわれず実態を見よう」と言うことにつきる。

旅館ユニフォームシステムを活用してGOPを弾き出すには、アベレージでなく個々の客単価を捉える発想が欠かせない。そのために筆者は「5つの鉄則」を掲げてきた。@現状GOPと人件費の検証A人件費の改善B室料収入の増加C減収増益の検討D原材料費vs人件費率の検討――とななる(第162回参照)。

最初の2項目をGOP確保へのホップとすれば、次の2項目がステップ、最後の1項目がジャンプで、三段跳びが完成する。1項目の検証は、まさに個別の単価を捉えなければ把握できない。アベレージでは検証にならないわけだ。

個別の単価とは、下表(第164回再掲)の左端に掲げたものだ。分かり切っている内容だが、日常業務の中で詳細に記録し解析する作業(ログ解析)は、残念ながら粗略に扱われているケースが少なくない。人手を回わせないないのは理由にならないし、旅館ユニフォームシステムなら雑作なく済む話でしかない。

いずれにしても、前述したパンフレットなどへの表示が「ちょっと上」の2万円帯の内容であったとすれば、料理運営原価はすでにイエローカードではすまない。そのことを、もっと真剣に捉えることがGOP確保の決め手だ。(つづく)