前回の稿で料理運営原価と客室運営原価(室料売上)を把握するだけでは、旅館ユニフォームシステムの意味がないと逆説的に述べた。それは、財務会計として計数を把握しても、運営のディテールは見えてこないと言う意味だ。つまり、下段の表(再掲)をどこまで掘り下げても、本シリーズで掲げている「どこで儲けて、どこで損をしているのか」が突き止められない。
なぜ、そうした会計手法がまかり通ってきたのか。例えば、価格グレードを示す一般的なものとして「平均単価」が多くの場合に指標となってきた。もちろん消費者も、それを目安にしてきた。そうした背景が、アベレージ(平均)の発想方法の根底にあると筆者は見る。だが、アベレージで示される数値は、平均以外の何ものでもない。単純な数値例を示してみよう。10人のお客を仮定して、単価1万円が9人、同じく2万円が1人だった場合、10人の合計額は11万円。平均単価は1万1000円となる。だが、ここには運営にかかわる多様な問題点が潜んでいる。とりわけ顕著なものは、平均単価が現実の数値であっても、ハードやソフトは2万円に対応したものが求められる。そこに運営上の矛盾がある。最も悪しき一面は、全体のグレードを2万円に合わせて「平均化」しようとすることだ。結果として高額客で得た儲けを平均化の原資に流用することになる。いわば「貢ぎの構造」だ。
運営の計数管理では、お客の顔を「1万円の顔」「2万円の顔」など属性の範疇で捉える必要があると述べた(第162回)ように、運営実態を把握して処方箋を考えなければGOPは出てこない。旅館ユニフォームシステムでは、客単価帯別に実態に沿った分類を前提にしている(左表)。再掲したサンプルの旅館は50室規模であり、実際の客単価帯は1万円未満から4万円以上までと幅は広いが、平均単価は1万3198円だった。前述した矛盾がこの旅館でも現実にGOPの足を引っ張っている。
旅館ユニフォームシステムとして数値を捉えると、1万円から1万8000円の価格帯が約半数を占めてアベレージの根底を成している。これは当然の結果だが、問題は客単価に対する料理運営原価や室料売上の比率にある。端的に言えば、下段の表で55%と示されている料理運営原価のアベレージは、単価帯のコストバランスとマッチングしていないことが明らかだ。同様のことが客室売上にも言える。
価格帯別の対応は、日常のランク別料理運営でも行われているはずで、そのデータとコンバートすれば入力作業は一度に済む。前回記したように、入力後の仕分けはコンピュータにまかせればいい。決して難しい話ではない。(つづく)
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