先の総選挙で自民党が大勝した。有権者の肝心事は、およそ半数が景気と雇用だったと報じられている。景気に関しては、2%のインフレ目標が注目されている。いわゆるインフレターゲットであり、物価下落と不況のデフレ・スパイラルを断ち切るのが狙いだ。ただ、実効が表れるのは1年以上先との観測や、両刃の剣となりかねない懸念も一部にはある。いずれにしても、これからの推移には目が離せないが、旅館にとって焦眉の急は、経営システムを刷新してGOPを確保する自助努力が必要なことに変わりない。
さて、本稿では前3回にわたって「単価に対応する料理運営コスト」について述べた。これは、発想のベースに製造原価でもある料理運営コストの概念が必要になってくるからだ。また、どのような対応方法であっても「原価は幾ら以内に収める」とした目安が必要だと述べてきた。そこで1つのシミュレーションを行ってみたい。事例としてレストランで提供する夕食の料理運営コストに注目してみよう(第151回「単価に対応する料理運営コスト・上」参照)。
ここでは、レストランでの夕食料理運営コストを、実際のケースで多い1万円から1万4000円まで3つの事例を挙げた。人件費算出のベースは、法定福利費を含む月給25万円から、1時間コスト約1500円。これについて現状(第151回)を「before」とし、シミュレーション後を「after」として対比したのが下の表だ。
食材費や調理コスト、配膳・洗浄・その他については、今後の課題として手をつけていないが、料理運営原価は現状に比べて単価別のいずれもが低減している。理由は、人件費にあるのが一目瞭然だ。
afterでの施策は、次の3点を組み替えた。@出迎えコストで従前のスタイルを改めて「別人員」にしたこと。A備品準備設営を「当番制」で実施する。B料理セットを前項の備品と同様に当番制にする。これだけで料理運営原価は、単価1万円で約20%(745円)、1万2000円で約16%(同)、1万4000円で約19%(1185円)それぞれ低減している。
もちろん、前述の別人員や当番制は、要員をどこから確保するかがポイントであり、単に形だけ取り入れても意味がない。そこには、現状を適切に把握し解析を踏まえた運営システムの変更が不可欠だ。詳細は今後細述するが、これ以上の人件費削減は不可能と諦める必要がないことを、ここでは理解してほしい。
また、現状の適切な把握には、旅館版ユニフォームシステムが何としても求められる。ムリ、ムラ・ムダがどこに潜んでいるかを洗い出すには、会計システムの適正化が第一歩にほかならない。次回からこの点にスポットをあてる。(つづく)
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