これまで、料理運営コストについて、料理の提供場所や価格帯別に大要を検証してきた。また、前3回は夕食に絞ってきたが、今回は朝食を含めて全体を俯瞰してみよう。ただし、比較を容易化するために、「食事場所で変わる料理運営コスト」(第150回)でとり上げた単価1万2000円をベースに検証をすすめたい。
まず、レストランでの料理運営コストは、夕食の4755円と朝食の785円を合算すると5540円になる。一方の部屋出しは3705円と785円で合計額は4490円となり、その差は1050円と計算できる。つまり、1万2000円の収益から製造原価(販売管理費を除く)を差し引いた残りは、レストランでは6460円、部屋出しは7510円となる。ここから送客手数料分の15〜20%(1800〜2400円)を差し引き、バックヤードの人件費、維持管理費、投資返済などをさらに差し引いた残りは、ケースバイケースで各社の事情が異なるにしても、利益として決して大きなものではない。それが旅館の実情と言っていいだろ。
そこで、発想のベースに製造原価でもある料理運営コストの概念が必要になってくる。語弊もあるが、最初から利益を度外視したビジネスなどあり得ない。一般的な製造業の発想に立てば、原価から「幾らのものを、どれだけの価格で販売すれば、利益は幾らになるのか」、あるいは利益から「この利益を得るには、原価に対してどれだけの価格で売ればいいのか」、さらに「この価格でなければ売れないのならば、原価は幾ら以内に収める必要があるのか」などさまざまだ。ただし、前二者は売り手市場の要素が高いときには可能だが、現在の価格志向の強い状況下では3番目の発想が有利なのは言うまでもない。
さて、改めて料理運営コストの総額を捉えてみると、レストランでの5540円は、単価に対して46.1%だ。部屋出しの4490円は37.4%となる。これが、製造原価としての料理運営コストだ。さらに、この料理運営コストには、いわゆる黄金律は存在しない。価格によって50%が妥当な場合もあれば、30%で抑えなければGOPを確保できないケースもある。また、1旅館の単価にも幅があるために、それらを勘案した価格施策や永年にわたり培ってきたクオリティの維持など多元的な要素にも対応しなければならない。
つまり、どのような対応方法であっても、前述の「原価は幾ら以内に収める」とした目安が必要だ。ただし、初めに目安ありきではない。現状をつぶさに捉えて解析し、そこから導き出すものだ。それが見つかれば、運営変更の打つべき方法論も練り上げることが可能だ。(つづく)
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