「儲けるための旅館経営」 その152
単価に対応する料理運営コスト(中)

Press release
  2012.12.8観光経済新聞

前回に続いて今回は、単価別みた部屋出しの料理運営コストの実態を検証してみる。今回の事例は、部屋出しであることから単価は1万2000円から1万8000円までの3つの事例を挙げてみた。なお、人件費算出のベースは前回同様に、法定福利費を含む月給25万円から、1時間コスト約1500円(厳密には1439円)とした。

それぞれの単価は、1万2000円を仮の基点とした場合に、1万4000円はアップ率で約17%、18000円は同50%となる。これらの数字を基に前回と同様に夕食の料理運営コストとの相関性をとらえてみる。

まず、1万2000円の夕食料理運営コストの総額3705円は、前回のレストランでの同単価の数字(4755円)に比べて1000円以上も低い。さらに1万4000円になると、レストランの同単価での6345円に比べて4595円とその開きは一層大きくなっている。理由については「食事場所で変わる料理運営コスト」(第150回)を参照されたい。

さて、部屋出しにおけるこうした料理運営コストを、前回のレストランと対比が可能な1万2000円と1万4000円について、それぞれの項目に沿って捉えてみよう。まず、接客コスト合計は、レストランが1万2000円で1600円、1万4000円で2420円であったのに対し、部屋出しは両価格帯ともに1275円で済んでいる。

その背景にある接客係の状況をみると、レストランでは接客係1人が対応する客数が、単価1万2000円で4卓(12人)、1万4000円で3卓(9人)となっていた。これに対し部屋出しでは、両単価共に接客係1人で4部屋(10人)に対応していた。これを客1人に対する接客係の時間コストに置き換えると、さほど大きな違いは出てこない。違いの出る要因は、前回も指摘したようにレストランや食事処では、接客係のほかにホール要員が欠かせないためで、その分の人件費を上乗せして接客コストを算出すると上記のような結果になる。

さらに、調理コストや配膳、洗浄などすべてを加えた人件費合計を算出すると、単価1万2000円では、レストランが3285円、部屋出しが2185円。単価1万4000円では、レストランが4705円、部屋出しが2805円となっている。レストランに対して部屋出しの合計人件費の低さが窺われるところだ。

一方、食材費は、レストランでは単価1万2000円で1470円、1万4000円では1640円。これに対して部屋出しでは、それぞれの単価で1520円と1790円で、どちらも部屋出しの方が若干だが高めになっていた。

料理運営コストとして製造原価を明確にすることで、食材料にウェートを置くか、それとも接遇方法の密度を高めるかを選択でき「料理運営コスト=X+Y」の方程式から自社の特色(差別化要因)を導き出すことが可能となる。もちろん、「CSとESが共に満たされる」と言う条件にも叶う。

詳細は別の機会に譲るが、今回の事例で取り上げた部屋出し(1万8000円含む)の夕食料理運営コストは、そこに朝食分コストを加えても、筆者が提唱するコストバランスの許容範囲に、概ね収まっている。(つづく)