「儲けるための旅館経営」 その151
単価に対応する料理運営コスト(上)

Press release
  2012.12.1観光経済新聞

前回は、単価1万2000円を基本に食事提供がレストランと部屋出しの事例から料理運営コストを比較してみた。結果として部屋出しの方が料理運営コストの優位性が数字の上で証明された。今回と次回は、単価別にレストランと部屋出しの料理運営コストの実態をそれぞれ検証してみる。

まず、今回はレストランでの夕食料理運営コストを、実際のケースで多い1万円から1万4000円まで2000円刻みで3つの事例を挙げてみる。なお、人件費算出のベースは、これまでと同様に法定福利費を含む月給25万円から、1時間コスト約1500円(厳密には1439円)とした。

まず、単価として1万円を仮の基点として捉えると、1万2000円は20%増、14000円は40%増となる。極めて当たり前の計算だが、料理運営コストにこの比率はあてはまらない。これは、再三指摘をしてきたように、料理運営コストが旅館における「製造原価」であるためだ。

理論的な話しの前に、実例の数字を解析してみよう。1万円の料理運営コスト3710円が適切か不適切かは別にして数字だけを追ってみると、1万2000円の4755円は、夕食の料理運営コストとして比較すると28%増になっている。同様に1万2000円の料理運営コストに対する1万4000円の6345円は33%増だ。もう少しドラスティックな数字をあげると、1万円の料理運営コストに対しては、実に70%を超える結果になっている。単価が40%上がっただけなのに、料理運営コストの増加率は、辛辣に言えば常軌を逸しているとさえいえる。これではGOPを上げることは不可能だ。

なぜ、こうした状態が日常的に発生しているにもかかわらず、それが見過ごしにされてきたのか。答えは前述したように、料理運営コストが旅館における「製造原価」であることに起因する。従来の原価意識が払拭されていないためだ。

例えば、食材費を単体として捉えてみると、1万円の食材費に対して1万2000円は23%増の1470円、同様に1万4000円では37%増の1640円となっている。この増加率は、概ね単価の増加率とリンクしている。つまり、これまで「原価率」と捉えられてきたもの実態をそこに見出すことができよう。

このように示してきた実態は、いわゆる数字の遊びではない。現実にそうした状況がまかり通っていることを改めて認識してほしいとの願いからであると理解してほしい。

つまり、旅館における料理運営コストとは、製造原価にほかならないわけだ。製造原価とは材料費だけでなく、加工費用や提供するサービス費用などの総和と捉えなければならない(詳細は第149回「料理運営コストの業務区分」の表を参照)。

ちなみに、ドラスティックな数字として前述した単価1万4000円の対1万円70%増との数字は、接客係1人の担当卓数が、4卓(対応客数12人)から3卓(同9人)に変化したことが大きな要因になっている。単価と利用客のCSを勘案すれば「やむなし」と思いがちだが、人件費総体として捉え直し、適正な運営システムの構築を目指すのが料理運営コストの発想だ。(つづく)