「儲けるための旅館経営」 その150
食事場所で変わる料理運営コスト

Press release
  2012.11.24観光経済新聞

これまで数回にわたり、団体対応での料理運営コストの内訳を捉えてきた。夕食の提供場所としては、一般に宴会場、レストラン、客室などが用いられている。今回は、提供場所による違いをみることにした。

条件としては、1万2000円程度で団体としては比較的高単価なケースを実例から拾い出してみた。また、この価格帯では、前回まで事例として捉えていた7000円から1万円未満の団体とは様相が異なるために、宴会場での一括扱いではなくレストランや部屋出しなどのケースを紹介してみる。クオリティ重視の募集ツアーや、自社のカスタマクラブへの謝恩企画なども、こうした団体に相当するともいえる。

さて、ここに紹介する料理運営コストの内訳(下表)に対しては、一見して奇異な印象を受ける読者がいるだろう。第1は、レストラン形式での夕食料理運営コストは、4755円なのに対して、部屋出し形式ではそれを1000円以上下回る3705円に収まっていることだ。部屋出しは手間がかかり、レストランは比較的運営コストを抑えられると考えられてきた実態が、見事に裏切られている。

ただし、条件の第1である消費単価の設定が、前回までと異なり1万円超になっている点に注目をしてほしい。1万円以下の団体では、絶対条件として接客係1人がお客20人に対応することが不可欠であることを指摘してきた。通常の運営形式においては、20人を超えると手の回らない部分が生じるし、20人以下では料理運営コストが3038%の枠に収まらなくなる。つまり、GOPの確保が難しくなるからだ。これに対して単価1万2000円程度の料理運営コストは、約50%弱である。言い換えれば、それぐらいのコストバランスの下で対処しなければCSの満足を得るのは難い。

さて、改めて単価1万2000円の宿泊に対する夕食の料理運営コストを食事場所別に見てみよう。料理運営コストで大きな違いを生みだしているのは、ここでも人件費(接客)のあり方だ。前提条件として、レストランは接客係1人が4卓(合計12人程度)に対応しているのに対し、部屋出しは接客係1人が4部屋(同10人程度)に対応している。

この数字を見る限りは、レストランの方が効率的に有利の軍配が上がりそうだが、現実の運営形態を解析すると、レストランには接客係のほかにさまざまな場面に対応するホール要員が配置されている。その人件費を客1人当たりに按分していくと別表で示したような内訳になる。こうした実態は、レストランに限らず食事処にも概ねあてはまる。

実は、これこそが料理運営コストを仔細に解析することで見えてくる実態だ。また、これまでに「料理運営コスト=X+Y」の数式で例示したように、料理原価の内訳を差別化に反映させ一層の満足度アップを図る方法も欠かせない。つまり、利益は収益から原価(料理運営コスト)と販管費を差し引いたものであるとの「原価概念」が、旅館の継続を維持する最も基本的な認識である。そして現代では「減収増益」で成し遂げることが肝要だといえる。(つづく)