「儲けるための旅館経営」 その147
活路のキーワードは「減収増益」

Press release
  2012.11.3観光経済新聞

前回は、80室で収容250人規模の旅館での料理運営コストの一端を紹介した。そして、旅館の一般的な実態に近付けるために、客室稼働が75%程度の繁忙日にフォーカスし、一般客140人と団体客60人のケースをみた。当日の団体客の単価は7000円なのに対して、一般客の単価は9000円から1万5000円まで多様であることから、平均値である1万円を単価の基準に各部を算出した(右下表再掲)。

団体については、前回も触れたように料理運営コストのバランスが崩れていた。単価7000円に対して料理運営コストが3195円で、率に直すと46%だ。一般客は、単価ごとに接遇と材料原価の両面で若干の可変を行い、コストバランスの成り立つ40%前後に収めていた。

この事例で当日の総売上をみると一般が140万円、団体が42万円で総額は182万円だった。従来の経営概念の下にあって、平均単価1万円で健全経営が持続できていた旅館だとすれば、GOPの最低ライン15%を算出すると、273000円となる。当日の宿泊者数でこれを割ると、1人あたり1365円だ。

極めて乱暴な計算だが、団体の単価が7000円であっても、旅行業者のマージン率が結果的に20%程度になっていれば、5600円の単価ということになる。ここから料理運営コスト3195円と必要GOPの1365円を差し引くと1040円しか残らない。同じ条件で一般の場合を計算すると、倍以上の2635円が残る。単価面で1万円の30%引きの団体単価でああっても、手元に残こる金額は半分以下どころか40%を割り込んでいる。

ここでの注目点は、前回の末尾で記した一般と団体の客数が逆転すると「客数あれど利益なし」になることだ。俗な言い方をすると、安売りで「賑わっているのに内実は火の車」と言うことになる。これは、多くの経営者が感覚的に掴んでいると思う。言い換えれば、それこそが「厳しい経営環境」の根源でもある。

この現実に対応するためには、シビアなコスト管理がカギを握っている。とりわけ料理運営コストの意義を認識し、単価に対するコストバランス(上図)に照らしながら、日常の管理業務システムを再構築するのが急務だ。

さらに、旅館が健全経営を持続するためには、極論ではあるが「減収増益」のマネジメントを本気で考えるべき状況に置かれていると筆者は思う。(つづく)