これまでの料理運営にかかわるコストは、材料原価と厨房人件費の限られた範囲で捉えられることが多かった。前回の稿では、例えばこの点を1000円(材料原価=X)と500円(厨房人件費=Y)で合計1500円を例示した。単純に数式化すると「1000+500=1500」となる。これに対して、逆から捉えて「1500=X+Y」とした場合に、XやYはさまざまな数字に可変できることを示唆した。
同時に、Yで示した厨房人件費は、単に板前や厨房作業に付随した人件費だけでなく、旅館商品の中核的位置付けの一角である料理提供では、メニューの作成に始まって、材料の発注、検品、下ごしらえ、調理、盛付、輸送、配膳、給仕、下膳、洗浄、収納など幾つものパーツが組み合わさっている。こうした観点から導き出されるとこととして、板前などの人件費だけでなく「原価+人件費(諸コスト)」の捉え方が必用なこともさまざまな角度で述べてきた。
この発想による料理運営にかかわる業務は、別表の一覧に示したように、かなり広範なものであると理解していい。つまり、従来の料理提供にかかわる冒頭の「X+Y=1500」の数式は、単価とコストの整合を全体として捉えるときに不完全だ。前回の稿で、価格設定の3つのセオリーを示し、現状について「競争原理で第3の方法をとりながら、セオリー的には第1の方法が踏襲されている」としたように、全体では価格志向に対応する形をとりながら、内実はタテ割り業務のなかでコストの積み上げをしている。これではGOPが確保できない。
料理運営コストについては、コストバランスの適正指数として「50%ライン」を提示してきた。単価1万5000円を境にして、それ以上でも以下でも比率は50%より低くなる(「現状のコストバランス見直しを」第127回)。仮に単価1万円ならば40%がGOPの出るコストバランスの適正値だ。数式で示せば「4000=X+Y」の形になる。XとYの可変とは、これによってはじめて意味をもつ。Xを高くすれば料理で勝負、Y重視なら人的サービスでの特徴づけなど、価格志向への対応や複数価格帯への対処を図りながらも、個性化や差別化など日本旅館として本道を歩む道筋が見えてくる。
つまり、料理運営の業務一覧表で示した部分は、タテ割り運営を排して「料理運営コスト」として見なおすと、オールラウンド化(マルチタスク)で社員数(人件費)の大幅な削減可能だ。それがGOPの改善につながってくる。(つづく)
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